二人の意見を聞いて岡崎達の方を向き直す真子。ホラ見ろ。といった様子で、
「っていうことよ。だからこれ以上アンタ達に付き合うつもりはないわ。ほら行こう二人とも」
ジト目でそう言い岡崎達に背を向ける真子。鞄を持ち立ち上がる。千佳子と美子もそれに従い、
「あは〜。じゃあまたクラスで会おうね〜」
「バイバ〜イ。また機会があったらよろしくね〜」
そう言い岡崎達に背を向ける三人。ちくしょう。こんな美少女達(真木除く)とイチャイチャ出来るチャンスを逃してたまるかっ! そう思い必死に策を講じる岡崎。片腕を伸ばしながら急に下手に出て、
「ちょっと待ってくれ! 俺にも非がある気がしてきたっ! 謝るから一度話し合おうぜっ! なっ!?」
「くどいっ! もうアンタと話す事なんてないわよっ!」
振り向きもせずに一蹴する真子。だが岡崎は諦めない。俊敏な動きで机から降りて、
「頼むっ! 少しでいいから俺の話をーーちっ! スーツって動きづれぇなっ!」
ついに実力行使に出た岡崎。彼女達の背中に向けて猛ダッシュ。真子の腕を掴んで制止させようとする。だが、
「お願いだっ! チャンスをくれぇえ!! ーーってうおぉおっ!!」
「きゃっ!!」
ブチッ!! ズリリッ!!
慣れないスーツで素早く動いたせいだろう。岡崎は派手に体勢を崩す。そして咄嗟に何かを掴んで転倒。可愛らしい悲鳴も聞こえたが気にしている余裕はなかった。岡崎はぶつけた額を押さえながら、
「イタタっ……あれ? なんだこれ?」
そう言って上体を起こす岡崎。すると右手には男のロマンスの塊ーースカートがあった。美咲高校の地味なデザインだが手に持つとやはり興奮するものがある。でも一体なんでこれが? ってか誰のだよ? そう疑問に思う岡崎。すると頭上の方から、
「む〜、岡崎君のエッチ……」
ちょっぴり不機嫌そうな千佳子の声。それは明らかに岡崎へ向けて発せられたものだ。だがそんな事を言われても訳が分からない。意味不明だ。岡崎は顔を上げながら、
「え? なんのこと……あ、あばばばば」
そして発作に近い奇妙な声を上げる岡崎。だがそれもそのはず。そこには天国があったのだ。
ーーこの世に完璧な純白は存在したんだな。
心底そう思う岡崎。目の前に見えるフルバックのフリルショーツに釘付けになる。そう、それほどまでに千佳子の“パンツ ”は美しい白さだった。神々(こうごう)しさすら溢れ出ている。それに普段見る事の叶わない太腿も大変素晴らしい代物だ。むっちりと肉の付いた色気のあるライン。それでいて気品のあるしなやかさ。いつもの岡崎なら確実に理性が崩壊するはずの光景。だがあまりの刺激に彼は冷静に感動すら覚えていた。涙を流してその絶景を網膜へと焼き付ける。すると、
「お・か・ざ・き?」
次の瞬間、地獄が訪れた。
「アンタ、自分が何をしたか分かってるの?」
そう言い千佳子の後ろから顔を出した真子。ニッコリと嗤って邪悪なオーラを全開に放出する。岡崎は本能で理解した。 危険すぎる、と。抵抗に意味が無い事は一目瞭然だった。岡崎は正座をして、
「は、はい。転んで水澄のスカートを脱がしました……」
「うん。じゃあ死のうか」
さらっと死の宣告をする真子。岡崎は手をブンブン振って、
「いや待てっ! これは明らかに事故だろっ! ちょと落ち着こうぜっ!!」
「いやそう言うのはいいから。とりあえず千佳子のスカートを返してよ」
「はいっどうぞ! これで許してもらえますよねっ!?」
シュバッとスカートを差し出す岡崎。少し惜しい気もするが命には代えられない。そう考えて潔く欲を捨てる。するとニッコリ笑顔でスカートを受け取る真子。そして千佳子にそれを手渡しながら岡崎を見て、
「うん。わかった。じゃあどっから折って欲しい?」
「何が分かったんですか!? ホント勘弁して下さい!!」
ガバッと勢いよく土下座をする岡崎。すると後ろから大声で、
「リーダー!! そんな簡単に諦めていいのかよっ!?」
「そうだっ! その後ろには楽園が広がってるんだぜっ! もう一度みたいとは思わないのかよっ!」
「お前等……」
席から身を乗り出して声援を送る二人。確かにみたい。でも……。と岡崎は心の中で葛藤を繰り広げる。すると、
「岡崎君。これが最後の試練だ。自分の手で幸せを掴むんだ」
「師匠……」
誇らしげな顔でそう告げた実。だが最後の試練と言いつつも完全にモテ試験から脱線している。ただセクハラ行為を勧めているだけだ。しかし雰囲気に飲まれている岡崎はその事に気付かない。三人の言葉で完全に迷いの消えた岡崎。覚悟を決めた笑顔で、
「みんな……ありがとう。俺やってみるよっ!」