「うん、まあね言葉の弾丸が刺さってるよ」
それを聞いてもふーんといった感じのミカ。まあこのぐらいで分かるのならば、おそらく彼女はこの性格にはなっていないだろうなと輝希は考える。ミカはうーんと唸りながら話を戻すように、
「でもおかしいんですよね レベル12以上を担当するレミちゃんでも失敗するなんて」
「ああ、こんな事は初めてだったな」
「あの、さっきもそのレベルがどうこうって言っていたよね? それが魂の強さを表しているの?」
分析を始める二人に問い掛ける輝希。レミは、ふむ、わかってるじゃないか。そう言った感じで、
「ああ、その通りだ。この値が高い程に強い魂だという事になる。ちなみに26が今まで最高とされる数値で、平均は4〜6程度だ」
「ええ、だから12以上を普段から回収しているレミちゃんはかなりの凄腕なんです。それなのに天界へ持ち帰れないなんて……」
「えっと、と言う事は僕の魂はすごく強いって事?」
なんだかまたゲームみたいな展開へと話が転んでいった。輝希はちょっと照れながらそう口にする。するとレミはキッパリと、
「いや君の魂はレベル2.4と平均以下のカスだ。私は人員不足だったので向かっただけだ」
「……」
シーンとなる空気。よくわからないが漫画のような“自分にだけある特殊能力”みたいなものを期待していただけに余計恥ずかしい。なるほど、昨日レミが『なんでこんな下っ端の仕事を』と愚痴っていたのはこういう事だったのか、と輝希は納得する。というか、それじゃあさっきの精神力がどうのっていうくだりはいらなかったんじゃないか、と文句。するとミカは弾んだ声で、
「ちなみにパンダとかラッコの平均が2.4ぐらいですね」
とよく解らないフォロー。そんな事言われて嬉しがる奴がこの世にいるのかと思う。もしかしてあの世にはいるのかしれないが、少なくとも僕は嬉しくない。輝希は苦笑しながら、
「そっか、動物と同じぐらいか……なんかやだな」
「何、いいじゃないかパンダ、私は好きだぞパンダ」
「私も好きですよパンダ」
と口々にフォローする二人。とはいっても僕ではなくパンダの事ですが。だが、たとえパンダの事とは言え二人の美少女から好きと発音されるといけないと思いつつも、ドキッとするものがあった。しかしこの女の子は例のごとくまるでわざとの様に、
「ちなみに本気だしたゴリラは4.6ぐらいありますけどね」
「よーしじゃあ僕も本気出しちゃおっかな〜」
ベッドから上体を起こした体勢でブンブンと腕を振るう輝希。ゴリラは駄目だよゴリラは。あれは自然界でもかなり強い部類だから……事実生きている状態で人間より強いし。と自分自身を慰める。そんな輝希をジト目で見上げてレミは、
「まあ何でも構わんが、とにかく問題は君のレベルじゃない。なぜ魂が天界へと持って帰れないという事なのだ」
「ですね。いったい何が悪いのか……」
先程までと変わり神妙な面持ちをする二人。そうだった、いつの間にか話がずれていた。そして忘れていた。僕は死んだのだ。だがそれも仕方ない気がした。3月のまだ肌寒い朝を感じ取る肌、芳香剤の爽やかな香りを伝える鼻、高校生にしては飾り気のないいつもの部屋を映す目。といったように、まるで想像していたものと違う死んだ状態。そう、死んだと言われなければ気付かない程に、彼の身体は以前と変わらずまるで生きているように存在していたからだ。輝希は振り回す手を止めて、
「えっと、何か心当たりはないの」
とは言えそんな簡単に解れば彼女達も苦労しないだろう。案の定レミは気難しい顔をしたままで、
「わからんな。なんせ手こずる事はあれど、こんな事態は初めてだからな……」
「ですよね。私はよく川に落としちゃってそのまま紛失したりしますけど、レミちゃんに運べない魂なんてありませんでしたからね」
「よし。君には頼まない。全てレミさんに一任するから」
「……私に運べない魂はない?