オリジナル小説

無料オリジナル小説 ボラ魂 2ー23

『何一人でブツクサ言ってんだ?』

 気付くと横に和也が立っていた。真子は椅子から飛び上がり、

『なっ!? え!? い、いつからそこにっ?』

『今来たばっかだよ。どうしたんだ? そんなに慌てて?』

『えっ、べ、別に〜……と、ところでさっきの、聞いてた?』

『あ? いや、よく聞こえなかったな。何かエロイ妄想でもしてたのか?』

『ちっ、ちがうわよ……うん、ならいいや』

 恥ずかしそうに呟いた真子。再び椅子に腰を掛ける。和也に聞こえなくてよかった。そう思いながら胸をなで下ろす。だがその顔は少し寂しそうにも見えた。すると和也はほんの少し苛ついた表情で、

『なんだよ。そう言われると気になるじゃねぇか』

『別にいいわよ。そんな小さい事は気にしなくてっ』

『ふ〜ん、そこまで言うならいいけどさ……』

 珍しくそのまま引き下がりそうな様子の和也。真子は話題変換も兼ねてそれを促すように、

『そうそう。ところで張り紙の方はどうなったの?』

『ん? ああ……それは、うん』

 不意に言葉を濁す和也。その表情は彼が後ろめたい事がある時にみせるものだった。真子はもしやと思いながら、

『アンタ……まさか』

 和也を指差してワナワナと震える真子。すると和也は僅かな沈黙の後に、

『てへっ。またしても殴っちゃいました〜』

 そう言いお茶目に舌を出してぶりっ子ポーズをとる和也。それにより場は再び沈黙。真子は俯き押し黙る。そして不意に顔を上げてニッコリ笑顔で、

『……さあて、謝りに行こ〜〜』

『おい待てよ。なんでそんな事しに行くんだよ』

 ガシッと真子の肩を掴む和也。真子はジト目で口を尖らせながら、

『なんでってアンタのせいでしょ。どうせまた変な言いがかりをつけて揉めたんでしょ』

『ちげーよ。アイツ等がグダグダうっせーからムカついて殴っちまったんだよ』

『それを変な言いがかりっていうのよ。ほらアンタも一緒に謝りに来なさい』

『はぁ? ふざけんなよ。行くわけねーだろ』

『またそんな事言って。だってパソコンが使えなかったら張り紙だって作れないでしょ?』

 呆れた様子で答える真子。その姿はまるで聞き分けのない子供を諭す母親のよう。すると和也はイライラしながら、

『うっせーな。別にあんな所に行かなくたって犬捜しぐらい出来るっての』

 そう言いおもむろにポケットから携帯を取り出した和也。パシャッと張り紙にあった犬の画像を撮る。そして携帯を操作しながら、

『こういうのは、こうやって、こうしてだな〜、あとはこうして……よし完成だ』

 ポチッと最後の一押しをして携帯を閉じた和也。薄く笑いながら携帯をポケットへと戻す。その顔はどこか満足気だ。真子は不審に思いながら、

『……アンタ、何したの?』

『ああ。よく解んない迷い犬捜しのサイトに登録しといてやったよ』

『いや、よく解んないとこに人の電話番号とか登録しちゃマズいでしょ……』

『そういうのイチイチ気にすんなって。大丈夫だろ。だってコイツ自分から電話番号載せてきたんだぞ。だから他の不特定多数に知られたって気にしねぇよ』

『学校とネットじゃ大分地違うでしょっ。今すぐ消した方がいいって』

『なんだよ。うっせぇ〜な〜。暇潰しは終わったんだから、もうオレには関係ないんだよ。し〜らね』

『好き放題やったら後は丸投げって……酷すぎるボランティア部員だ……』

『いいんだよ。どうせこんなのイタズラだろうし。面倒くせぇからもう帰ろうぜ。俺は忙しいんだよ』

『ったく、暇って言ったり、忙しいって言ったり、ホント我が儘なんだからアンタは……もう私も知らないわよ』

 独り言のようにぼやく真子。和也に続き荷物を持って椅子から立ち上がる。

『なんだよ? なんか文句あんのか?』

『べつに〜。なんでもありませ〜ん』

『ならよし。じゃあ行こうぜ真子』

『はいはい』

 そう言い二人は教室を後にした。いつの間にか当たり前となった光景。二人でのんびりと過ごす放課後。そして適当な時間に帰る毎日。ごくありふれた日常。でも小さな幸せ。手放したくない幸福。だから真子は強く願ったのだ。こんな日々がずっと続けばいいな。

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マーティー木下@web漫画家
web漫画家です。 両親が詐欺被害に遭い、全てのお金と職を失いました。 3億円分程の資産を失いました。 借金は800万円程あります。 他に会社に再就職して、 親の老後資金と自分の為に 働きながら漫画を描いております。 どうかお力添えをよろしくお願いします。 拡散などをしていただけると非常にありがたいです。
マーティー木下

この度はこのようなクソ底辺web漫画家のサイトにお越しいただきありがとうございました。
日常のつぶやきみたいな記事が多いので気軽に読んでください。

オリジナル漫画は下記リンクから飛べますので是非ごらんください。

マーティー木下の代表作 自称いけづらの浅間君が主人公の漫画です。
いけづらってなんだろ、いけづらってなに。 自称いけづらの浅間愁と周りが繰り広げるぐだぐたコメディ漫画です。 短いページ数ですので、是非気軽にお読みください。

池面ーいけづらーhttps://mkinoshita-home.com/?p=908


小説家になろうにも掲載されている、私が昔書いたライトノベルの紹介です。
オリジナル小説エンジェルゲートあらすじ

少年、増田 輝希(ますだ てるき)は天使に取り憑かれていた。
「ご主人〜」
そう可愛らしい声で彼を呼ぶのは天使のミカ。
薄桃色のショートボブの少女だった。
「増田のマスター」
その隣で不機嫌そうに呟くもうひとりの天使レミ。
小麦色の褐色肌、さらっした黒の長髪を風になびかせていた。
この二人はタイプは違えど共に整った容姿をしており、何も知らない人がみれば羨むような状況だろう。だが、当の本人輝希の顔は浮かない。彼は二人の天使を交互に見て思うのだ。
一体、なんでこんな事になってしまったのかと。

*少年と天使が織りなすラブコメディです。

2011年頃に書いた作品になります。拙い作品ですがよろしくお願い致します。


小説家になろうにも掲載されている、私が昔書いたライトノベルの紹介です。

オリジナル小説ボラ魂あらすじ

私、真木真子は努力が嫌いだ。
禄那(よしな)市立美咲(みさき)高等学校に通う一年生・真木真子(まきまこ)。
毎日をぼんやりと過ごしていた彼女の前に、
ある日突然現れた先輩・椎野実(しいのみのる)。そして彼は戸惑う真子にこう言い放つ。
「ボランティア部に入ってくれ!!」

*ボランティア部を舞台にしたラブコメ作品です。2010年頃に書いた作品になります。
データが残っていたので、せっかくなのでサイトに順次掲載していきたいと思います。
めちゃくちゃ拙いですがよろしくお願いします。

こちらもよろしくお願いします
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