オリジナル小説

オリジナル小説 ボラ魂3ー5

「いや、なんの略語でもないですよ。これでフルネームですから」

「オレわかったよ! 私の取り巻きは全員マッコイズの略だね!(キリっ)」

「……」

「……よし。これで私も登録が終わりましたよ」

「ええ。じゃあ、次の話に移るから席についてもらえる?」

「はいっ。わかりました」

 スタスタと席に戻ろうとする真子。すかさず実はガシッと真子の肩を掴み笑顔で、

「おい、真子」

「なんですか? (ニコっ)」

「なんですか? じゃないだろ。オレ、今さっきボケたよな?」

「ええ。聞いてましたよ。すごいつまらなかったです」

「いや、だったら反応しようよ。たとえつまらくてもさ」

「え? 嫌です。だって先輩に関わると私まで注意されますから」

「でもだからって無視はないだろ。ていうか俺にも番号を教えろよ」

「はい。嫌ですけど?」

「いや、嫌ですけど? はおかしいだろ。部長に教えたら副部長である俺にも教えるべきだろ?」

「え〜。だって先輩と赤外線受信すると、なんか変なのに感染しそうだから嫌です」

「なんだよそれ。ただちょっと通信して終わりだぞ。何も起きないだろ」

「でも予防するに越したことはないじゃないですか。あ、諸橋大漢和もろはしだいかんわ5冊ぐらい挟んで通信するなら大丈夫ですよ」

「それじゃ赤外線通るわけないだろっ! どんな用心だよ!」

「え〜……じゃあわかりましたよ。画面見せて下さい。手入力で登録しますから」

「え、でも俺のアドレスって相当長いぞ?」

「別にいいですよ。先輩の電波を浴びるよりはマシです」

「なんだよ先輩の電波って……じゃあ好きにしろよ。ホラ」

 ポケットから携帯電話を出した実。プロフィール画面を呼び出して真子へと手渡す。真子はそれを見ながら、

「はい、どうもです。どれどれ、」

 開いたその先には、

 機種名称

 C-05M

 メールアドレス

 yunayunayunayunayunayunayuna@domomo.ne.jp

「長っ!! ってか怖!!!」

「なっ? だから言っただろ?」

「いや限度ってもんがありますよ!! ていうか何でひたすらにって書いてあるんですか!?」

「なんでって、そりゃあ柚菜が好きだからだよ」

 頭の後ろで手を組み、何と無しに言った実。真子は呆然。しばしの間の後に、

「え? 今なんて?」

「ん? だから、俺は柚菜が好きだって言ったんだよ」

「え〜と、それは実先輩が柚菜先輩を好きって意味ですよね?」

「そうそう」

「で、柚菜先輩が実先輩を好きって意味ですよね?」

「いやいや、動揺して変な事言わないでよ。私は別に好きじゃないから」

「全くそんな事言っちゃって。素直じゃないんだから。マイハニー」

 いきなり柚菜へ急接近した実。顔を近づけて甘い声で囁く。柚菜はニコッと笑って、

「ええ。じゃあ自分に素直になるわね」

 そして実の頬を右腕で鷲掴み。ミシミシミシと万力のように締め付ける。実は顔を圧迫されてすごい形相で、

「ふぃふぁふぃ。びょめんにゅびゅにゅにゅて」

「あら、割と可愛い声が出るのね。押すともっと出るのかしら?」

 ミシミシミシ。

「フィゴー!! フィゴー!! ファフフェテー!! フィヌー! フィヌー!」

 真子に助けを求める実。正直フゴフゴと聞こえるだけで意味は解らない。だがなんとなく危険を悟ったのだろう。真子は恐る恐る、

「えっと、柚菜先輩」

「はい、何かしら?」「フィゴフィゴゴゴ」

「いや、何かしらじゃなくて。そろそろ離してあげたらどうですか? 先輩死んじゃいますよ」

「そう? まあ十分痛ぶったし、この辺で許してあげるわ」

 パッと手を離した柚菜。実は息を吹き返して、

「プハァ〜! 真子ありがとうなっ! ってか大丈夫か! 俺の無敵のジャ(ジャ煮ーズみたいにカッコいい顔)は!? 崩れてない!?」

「ええ。元からなってないですから大丈夫ですよ」

「そっか! なら良かった! いや良かったのか? この場合?」

 頭に疑問符を浮かべる実。柚菜は頭を抱えながら、

「はあ、全く……次に変なこと言ったらこの倍はやるわよ?」

「ぶ〜。なんでさ〜? 好きだから好きって言って何が悪いのさ〜?」

「だから、そういうのは場所を選んで頂戴。こういう所で言わないで」

「そうか〜? 別に部室ならいいだろ」

「よくないわよ。第三者がいるならどこでも駄目。恥ずかしいでしょ」

「大丈夫だって〜。俺はそういうの気にしないから」

「駄目。実がよくても私は気にするの」

「なんだよ〜。そんなのい〜じゃん気にしなくて。真子もそう思うだろ?」

「まあ、それは人それぞれだと思いますけど……でもなんか意外ですね。あ、これどうもです」

 アドレス登録を終えて実に携帯を返す真子。実はそれを受け取りながら、

「おう。で、何がだ?」

「なんていうか、先輩って恋愛とか興味ないイメージがあったんで……他の人にもそんな感じなんですか?」

「いや言うわけないだろ。こんなこと」

「そうなんですか?」

「ああ。だってーー俺が好きなのはずっと柚菜だけだからな」

「な!?」

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マーティー木下@web漫画家
web漫画家です。 両親が詐欺被害に遭い、全てのお金と職を失いました。 3億円分程の資産を失いました。 借金は800万円程あります。 漫画が好きです。コンビニも好きです。
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