オリジナル小説 ボラ魂4ー3
それを聞いた女子二人。途端に聖母のような全てを包む笑みを浮かべて、
「無理ね。師弟ともに一生出来ないわ」
「二人とも大丈夫ですよ。来世に賭けるってのも潔くてカッコいいと思います」
「いきなりバッサリと切られた! 今世でモテなきゃ相談に来た意味ないよね!?」
「しかも俺までとばっちり受けた!」
全力でツッコむ男子二人。女子二人は、何をバカな? と言わんばかりの表情で、
「え? だって二人とも自分の顔を見てごらんなさい」
「はい。向かい合わせになってお互いを確認したらどうですか?」
「そんなに酷くはないだろ……じゃあ岡崎君こっち向いてくれ」
「はい、わかりました」
二人に言われて再び見つめ合う二人。お互いの顔面を隅々まで見る。すると、
「ええと……」
岡崎は呟きながら思う。師匠ってやっぱりカワイイ顔してるなぁ、と。小柄な身長。少し癖のあるブラウンのショートヘア。全体的に薄い印象の顔面。正面に立ち見下ろす形になっているのでより女系に見える。メイクとかをしたらその辺の女よりカワイイかも知れない。ぼんやりとそんな事を考えてしまい頬が無意識に赤く染まる。岡崎は考察の果てに変な興奮を覚えてしまった。その一方で、
「この少し濃い顔面もよく見ると……」
実は呟きながら思う。岡崎君の濃いめの顔も男らしくてカッコいいじゃないか、と。175cmぐらいの身長。中肉中背の体格。少しゴツいが割と三角な輪郭。と、作りは悪くない。さらに実はそこで気付く。あ、この人って昨日の全裸少年に出てたイケメンの芸人に似てるなぁ、と。なんていう名前だったかな。あのポンポン! ポーン! ってやる芸人。外人レスラーみたいな名前だったよな。と思考が脱線。確かこんな名前だったと思い、岡崎をしっかりと見つめながら、
「木村ホンマ・スキー?」
「……柚菜先輩、いま君がホンマ好きとか言いませんでした?」
「ええ。なんか呟いたわね。というか、この二人はいつまで見つめ合っているのかしら」
不審がる二人。しかし今の彼等は二人の奇異の視線など解りはしない。見えているのは目の前にいる相手だけだ。そう、見つめるうちに何故かあらぬ感情まで抱いてしまったのだ。だから囁くように甘い声で、
「岡崎君……」
「師匠……」
徐々に距離を縮めていく二人。こいつら怖えぇえ!! 真子は内心そう思いながらその光景を見守る。そして次の瞬間、
「はいストッープ!!! 近いし気持ち悪いから!!」
真子は全力で叫んで止めた。さすがにこれ以上は見ていられない。二人は我に帰ってハッとなり、
「ハッ! しまった! あまりのモテ引力(ジャ煮顔すぎて吸い寄せられる力)に過ちを犯すところだった!」
「危ねぇ危ねぇ。岡崎君の新たな魅力にメロメロになるところだったぜ……」
「柚菜先輩……なんかこの二人、怖いです」
「まあ、そう言わずに早く悩みを解決させて帰しましょう。ホントに気持ち悪いから」
「そうですね……じゃあ岡崎、先輩に聞きたい事があるならさっさと聞いちゃって」
さっきの余韻でまたボーっとしていた岡崎。再び真子の声で平常心になり、
「えっ、ああそうだな。では師匠、約束通りに来たので伝授をお願いします!」
奇麗なお辞儀を見せる岡崎。実は顎をしゃくれさせて低い声で、
「うむ。では始めるとするか」
「はい。で、水澄はどこにいるんですか?」
「は? 何でち〜この名前が出てくるのよ?」
「何でって、師匠が今日連れてくるって言ってたからさ」
「いやいや、そんなの嘘に決まってーー」
「実く〜ん。真子〜。お待たせ〜」
急にガラッと開いたドア。するとそこにはふんわりロングヘアーの巨乳美少女がいた。真子は動揺で机から実を乗り出しながら、
「ち〜こ! 何でここに!?」
「ん〜? 実くんに呼ばれて来たの。なんか放課後に協力して欲しいことがあるから来れないか〜? って」
「おうっ、わざわざありがとうな。じゃあ席を用意するからちょっと待ってくれ」
「は〜い」
「いやちょっと待って下さいよ先輩。ち〜こを巻き込んで何をする気ですか?」
奥から机を出そうとする実。その肩を掴んで真子はジト目で訪ねる。すると実は無邪気な笑みを浮かべながら、
「別に変なことはしないって。ただ岡崎君をイケメンにするのに協力してもらうだけさ」
「……絶対に無理ですけどホントにそれだけですか?」
「ああ、あたりまえだろ」
「むう……わかりましたよ。仕方ないですね」
「よし。じゃあ真子も机の位置を変えるのを手伝ってくれ」
「はいはい、了解でーす」
適当に返事をして立ち上がる真子。どうやら実は変なことを企んでいる訳ではないらしい。それに千佳子が嫌がっている様子もない。ならば問題はないだろう。真子はそう考えて素直に配置替えを手伝うことにした。