素っ頓狂な声を上げた柚菜。珍しく顔は真っ赤だ。柚菜らしくない慌てた口調で、
「いい加減にしてっ! ふざけてないで続きをやるわよっ」
「ぶ〜。なんでだよ〜。いいだろこんぐらい〜」
「とにかく駄目なものは駄目なのっ。ほらっ、あなたも戻りなさい」
焦った様子の柚菜。顔はまだほんのり赤い。真子はそんな柚菜が少し可愛く思えて、
「ふふ、そうですね」
「むぅ……あなた、何がおかしいの?」
「い〜え。なんでもありませ〜ん」
「そう……なら早く席に着きなさい」
「は〜い」
「ーーったく、実のバカのせいで……」
俯いて憎々しげに呟いた柚菜。すると耳元で、
「照れている柚菜もカワイイじゃないか」
「実、さっき言った事を覚えている?(ニコッ)」
真子の背後でボコボコにされる実。案外、この二人なら良いカップルになるんじゃないだろうか。そんな事を思いながら、真子は席へと着いた。
「ふぁい、じゃあ、次は何をしましょうかね?」
「あの、先輩?」
「ふぁい? にゃに真子?」
「それ、顔大丈夫なんですか?」
躊躇いながら訪ねた真子。それもそのはずだった。教壇に立つ実の顔は柚菜に殴られそこら中が腫れている。ひどい有様だ。実はすごく落ち込みながら、
「ううん。全く大丈夫じゃないよ。なんか奥歯とかすごい痛いし、もう帰りたい……」
「じゃあ、とりあえず保健室行った方がいいんじゃないですか? いくら先輩でも可哀想ですよ」
「真子……お前いい奴だな……」
ジーンと目を潤ませながら言う実。するとその横の椅子に座る柚菜がいつもの調子で、
「あなた、そんなの気にしなくていいわよ。これは自業自得なんだから。実が全て悪いのよ」
「ですよね〜。ってか先輩ならほっとけば直りますよね〜」
「ええ!? そんなあっさり翻ひるがえるの!? ここに味方はいないのかよ!?」
「実。うるさいわよ。しっかりやりなさい」
「ぶ〜。はいはい。わかりましたよー。ちゃんとやりますよー……で、次は何すんの?」
「さあ? というか普段こんな事しないから勝手が解らないわね」
「え〜〜……じゃあいつもは何をしてるんですか?」
「いつも? ああ、そう言えば部活動についてしっかりと説明してなかったわね……あなた中々いいことを聞くじゃない」
「いや、新入部員にアドバイス貰ってどうするんですか。もっと率先して下さいよ」
「まあ、いいのよ細かいことは。と言うことで実。さっそく説明して頂戴」
「おうっ。じゃあ真子、今から説明するからよく聞いとけよ」
「あ、はい」
「まず初めにここはボランティアをする部活だ」
「はい、知ってます」
「そうか……」
「……」
「……え、じゃあお前は何が解らないんだ?」
「いや、だからそれ以外の事が解らないんですよ……例えばどういう活動をしているのか、とか」
「ふぅ〜ん。活動か。まあ活動は大きく分けて二つだな」
「二つ?」
「ああ。柚菜担当の校外活動。それと俺担当の校内担当。おおまかだけどそんな感じかな」
「へえ〜。一応それっぽい感じになってるんですね」
「まあ、と言っても基本的に実は他の部活にちょっかい出して遊んいでるだけよね」
「なんだよ〜。柚菜だって校外を良い事に好き勝手やってるじゃんか」
「いいえ。私は先週もしっかり猫捜しとかをやっていたわよ」
「とか言ってまたボランティア部(仮)で領収書を切って買い食いとかしてたくせに〜」
「そんな事してたんですか……」
呆れたように呟き真子は思う。案外、柚菜先輩って子供っぽいな、と。あと、ボランティア部(仮)で領収書って切れるのかな。とも疑問に思う。実に指摘された柚菜は全く悪びれもせず、
「いや、それは誤解よ。あれは猫を誘き寄せるためにドーナツを買っていたの」
「嘘だ〜。時々柚菜の口まわりにチョコが付いてる時があるし。どう考えても猫にあげてないだろっ」
「それは……ドーナツを食べた猫を私が食べました」
「それはサラっと怖すぎだぞっ!?」
「いやいや、先輩方。話しがすごい逸れてますから。ちゃんと説明してくださいよ」
「え? ああ、悪い悪い。えっとどこまで話したっけ?」
「校内活動と校外活動があるってとこまでですよ」
「おうそうだったな。まあ主な活動はその二つだ。あと細かくすると色々あるけど、それは追々でいいだろ」
「はあ、まあ一応解りました……で、私は何をすればいいんですか?」
「う〜ん。そうだな〜。特にしっかりとした決まりもないし、お前がやりたい事でいいんじゃないか」