オリジナル小説

無料オリジナル小説 エンジェルゲート第4章ー24

エンジェルゲートサムネ

「もう、お別れのようだな……」

 よく見るとイワンの身体は薄く光りに包まれており、彼の身体は先端の方からまるで光の粒にも似たものへと変化して天井辺りまで昇ったところで霧散していく。どうやら彼の肉体も最期の時が近づいて来たようだ。イワンは最後にレミへと、

「レミ、地獄の果実には手を出すなよ。絶対にな」

「ああ、当たり前だ。馬鹿者が」

 馬鹿者。そう呟いたレミの表情は怒っているように見えた。だが当然だ、オレはバカだった。地獄の果実に手を出せばこうなる事はわかっていたのに。それなのに自分を押さえる事が出来なかった。しかし口に出したもののレミにその心配は必要ないだろう。だって、彼女はオレなんかよりもよっぽど強い少女なのだから。

「そうか……それもそうだな」

 そして、それが悪魔、いや天使イワンの最後の言葉となった。

「当たり前だ……イワンのバカが……」

 蛍の時と同じくイワンの肉体はまるで粒子のように頭上へと消えていく。神秘的にも見えるそれの最後の一粒が天に昇った時、レミは一人ごとのように呟いた。でも気のせいだろうか。言葉の内容とは裏腹に、

 

 彼女の横顔が酷く悲しそうに見えたのは。

 

 

「蛍、終わったよ」

 イワンの最後を見届けた後、三人は再びグランドを訪れた。消えて行った彼女ーー蛍の衣服を回収するためだ。輝希は屈んで蛍の上着を掴もうとして、そこである事に気付いた。

「あ、これ……」

 輝希は今日、蛍はあの日と同じ格好をして来ていると思っていた。

 でも一つだけ違うところがあったのだ。

 それはネックレス、服の下に隠れており気付かなかったが蛍は着けて来ていたのだ。あの日、輝希がプレゼントしたバーリー・イースのネックレスを。

「蛍……」

 彼はネックレスを右手で強く握りしめて、そして祈る様に目を閉じた。

 

 蛍、さよなら。

 ……。

 蛍、また会えるよね。

 君が生まれ変わっても、また会えるよね。

 蛍……。

 蛍。

 じゃあね。

 彼は何度も心の中で呟く。愛する人の名前を。

 もう会える事なんてないと本当は理解しているのに。

 忘れてしまえれば楽なのに。

 でも、忘れる事なんて一生出来ないから。

 だから輝希はずっとこの先も蛍の事を想い続けるのだろう。

 

 そして月日は流れていく。例え少年がどんな想いを抱いていたとしても、時は変わらずに過ぎ去っていくのだ。

ABOUT ME
マーティー木下@web漫画家
web漫画家です。 両親が詐欺被害に遭い、全てのお金と職を失いました。 3億円分程の資産を失いました。 借金は800万円程あります。 漫画が好きです。コンビニも好きです。
こちらもよろしくお願いします
エンジェルゲートサムネ オリジナル小説

オリジナル小説 エンジェルゲート第4章ー15

2023年3月21日
3億円詐欺られたweb漫画家・マーティー木下の部屋
当然だ。だってイワンは元の場所から一歩も動いてはいないのだから。ただその場で長い爪で自分を傷つけぬよう軽く拳を握っただけだ。ならばその痛みの正体は、 「ふん、私の怒りの感情 …
エンジェルゲートサムネ オリジナル小説

オリジナル小説 エンジェルゲート第4章ー19

2023年3月30日
3億円詐欺られたweb漫画家・マーティー木下の部屋
 だからこの作戦はレミ自身も囮。彼女にはもう一つ駒があるではないかーーレミの部下である天使ミカ。  本命はもう一人の天使を使った二重の奇襲だろう。いや、本命というより狙いは …
オリジナル小説

無料オリジナル小説 ボラ魂2ー16

2023年6月4日
3億円詐欺られたweb漫画家・マーティー木下の部屋
 ピィイィイ!! 「プレイ!」  実のサービスからスタートされる第六ゲーム。最後に成りかねないこの一戦。より気合いを入れ試合へと挑む。 「よしっ!」  球 …
オリジナル小説

無料オリジナル小説 ボラ魂2ー9

2023年5月15日
3億円詐欺られたweb漫画家・マーティー木下の部屋
「え? 今なんて?」 「わかったって言ったんです!!」 「え? マジ? じゃあ」  希望が見えた。実は喜びで痛みを忘れて、立ち上がる。 「ただし! 条件が …

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です