無料オリジナル小説 ボラ魂2ー11
「ふう……ってあれ、実さんじゃん。いつからいたの?」
「気付くの遅っ! いたよ最初っから!」
「そうなの? 小さすぎて分かんなかったよ」
「嘘付けっ、絶対視界に入ってただろっ」
「ん〜、身長もそうだけど、存在感もちっこいからな〜。分からなかったな〜」
「なっ!? ったく、お前はホント失礼だな〜」
「はははっ、ごめんごめん」
「……あのちょっといいですか?」
「ん? なんだよ真子?」
当然のように会話する二人。蚊帳の外な真子。頭には疑問符。手を上げ質問。困惑した顔で、
「先輩……美子と知り合いなんですか?」
「おうっ、割と仲良しだぞ」
きっぱりと肯定。複雑な気持ちの真子。苦笑いで、
「へ、へぇ〜……でもなんで美子と?」
「ん〜〜、俺ってボランティアで運動部の助っ人とかによく行くんだけど、それで仲良くなった感じかな〜」
「はあ、それで……っていうか先輩ってちゃんと部活動してたんですね……」
「おう、まあなっ」
「ふ〜ん、よく言うよ〜、ただ遊びに来てるだけじゃん」
茶化すように言う美子。どこか嗜虐的な笑み。昔は真子にも良く見せた表情。つまり仲良しに向ける表情だ。
「なっ、失礼な! ちゃんと練習相手してやってるだろ」
「どうだろな〜? 弱すぎて相手にならないからな〜」
「とか言って、お前だって時々苦戦するくせに〜」
「ん〜、球威はいいんだけど、コントロールがないからな〜。そこが直れば確かに苦戦するかも」
「へぇ〜、なら美子が教えてくれよ。やり方」
「いいけど、私の練習を手伝ってくれるんじゃなかったの?」
「まあ気にすんなよっ。俺が強くなれば、もっと助っ人として役立てるんだから」
「まあ、それもそうか。なら、今度教えてあげるよ」
「おうっ、約束だからなっ」
「ふふ、うん。わかったよ」
「よしっ!」
薄く微笑む美子。ガッツポーズをする実。そんな状況に真子は嫉妬。昔は真子に対しても、笑ってくれた。お茶目な意地悪も言ってくれた。名前で呼んでくれた。でも今は全て崩れた。無愛想な顔で、真木。ただそう言うだけ。だから嫉妬する。美子の笑みを受けている実に。これ以上ここにいたくない。そう強く思う。真子は急かすように、
「ちょっと先輩っ」
「ん? どうしたんだよ真子」
「どうしたじゃないですよ。すっかり目的忘れてません?」
「目的……ああっ、試合かっ」
「そうですよ、全くもう……」
「いやあ、完全に忘れてた……それじゃあ、美子。俺達ちょっと用事があるから行くわ」
「へぇ〜、用事ってなに?」
「えっと、ちょっと野暮用で」
「私、真木に聞いてないんだけど?」
厳しい台詞を口にする美子。竦すくむ真子。消え入りそうな声で、
「っ……何もそんな言い方しなくてもいいじゃん……」
「……だって事実だし。私、真木に聞いてないし」
「……美子……」
「まあまあ、落ち着けって二人とも。美子もらしくないぞ? 冷静になれよ。な?」
実は慌てて仲裁。二人を宥なだめる。美子はバツが悪そうに顔を背けて、
「ふん、別にいいけどね……で、実さん。用事って何?」
「まあ、簡単に言うとテニス勝負だよ」
「テニス勝負?」
「ああ、俺が勝ったら、真子はボランティア部に。俺が負けたら、今後一切真子に関わらない。っていう賭け試合」
「ふぅ〜ん……ボランティア部にねぇ……」
「ん? どうかしたのか?」
「いやっ、なんでもない」
疑問の目を向ける実。美子は手を振って誤摩化す。そして、もう一度何かを思案する顔をして、
「……よし、面白そうだし、私が審判してあげる」
「おぉ」「なっ!」
「そうだな〜。美子の方が安心だしな。よろしく頼むぜ」
「ちょっと先輩、勝手に決めないで下さいよっ」
「え? なぜに?」
「だって……美子、先輩と仲いいですし……私のこと嫌ってますし……公平じゃないですよ」
「真木」
「……なに?」
「私、テニスの試合に私情は挟まないよ。絶対に」
真子を見据えてきっぱりと断言。瞳には強い意志。失言だった。テニスに対して誰よりも真面目。それが葉月真子。卑怯な事などしない。知っていたはず。なのに、嫉妬心から言ってしまった。公平ではないと。真子は自分を責めるように、目線を背けて、
「……ごめん、よろしく……」
「よし、決まりだね」
「おしっ、じゃあ美子、手続きしといて。俺ら準備してくるから」
「はいよ〜」
「よし、じゃあ行くぞ真子」
「うぅ……なんでこうなるんだろう……」
消え入るような声で呟く真子。テニス勝負。美子の登場。最悪の展開。自然と溜め息も出る。だがもう逃げれない。真子は重い足取りで、実と共に施設奥へと歩いて行った。
★


