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無料オリジナル小説 ボラ魂2ー20

「ふう……」

 テニス場近くの裏道。車一台やっと通れるぐらいの細道。電柱と塀に挟まれた窮屈な所。真子はそこを歩いていた。自転車を押しながらトボトボと。時折、風でデニムのスカートが力なく揺れている。

「はあ……」

 また自然と溜め息が出た。テニスコートを出てからずっとこの調子。試合に勝利した。着替えもした。レンタル用品も返した。シャワーまで浴びた。それでも真子の心は晴れない。

「……また、変な事言っちゃった」

 真子は思い出す。先の発言。少し考えさせて下さい。実にそう言ってしまった。あんなに嫌だったのに。なぜか気付くと言っていた。どうしてだろう。真子はそう疑問に思う。だが、答えは明らかだった。揺れているのだ。弱い自分の心が。

「……でも、これでいいのかな……」

 自分の想いを確認するように呟く真子。さっきの試合のおかげだろうか。これ以上逃げたくない。今なら真子はそう思う事が出来た。少しだけでも前に進める。過去と向き合える。だが、迷いが無いと言えば嘘だ。事実、真子は今も戸惑いを感じていた。

「はあ〜あ……せっかくの休みなのに……」

 深く項垂れる真子。せっかくの土曜日。それもまだ午前中。空も晴れ晴れとしている。なのに真子の心はどんよりと暗い。前を向こうとしても未だ弱さを抱えたまま。モヤモヤは消え失せない。そう、本当は真子自身気付いているのだろう。入部する事に意味はない。それもただの逃避でしかないと。だが、今の真子にそれ以上の事は出来ない。だから心は晴れないままだ。進まない限りずっと。

「……ん?」

 ふと顔を上げた真子。左方を見据える。そこには古びた電柱。普段なら気に留めないような当たり前の物。だがそこには張り紙があり、真子はそれが何となく気になった。そして、引き寄せられるように張り紙へと歩み寄る。

「これって……」

 近付いて張り紙を凝視する真子。まず初めに目がいったのは右下の小さな文章欄。そこには問い合わせ先が記入されていた。『美咲高校・ボランティア部』と。

「何してんだろ、あの人達……」

 少し呆れたように呟く真子。まず部活じゃないし。そう思い苦笑。そしてなんとなく他の部分にも目を通す。

「え〜と、猫……探しています?……」

 どうやら迷い猫捜索の張り紙らしい。紙面の上半分には大きく猫の写真がプリントされている。文はパソコンで書かれており、レイアウトも良く見やすい。好感を持てる張り紙だ。 そこで真子は不意に思う。これは柚菜が書いたのではないか、と。この正確な文。無駄のないレイアウト。彼女の性格が出ている気がする。それに実はありえない。とも真子は思う。まず、あの人はパソコン作業が出来なさそうだから。

「なんか……意外だな」

 真子は苦笑した。だって可笑しかったから。あの美子以上に鋭い瞳。感情の感じられない冷淡な口調。人助けなんて微塵に思わなさそうな雰囲気。そんな彼女が猫探しをしている。だめだ。全く似合わない。想像出来ない。だから笑ってしまう。

 そこで真子はふと思い出す。少し前の出来事。まだ真子がボランティア部だった頃。あの退屈だが悪くなった時間。彼と作った思い出。その一つを思い浮かべる。真子は自虐的に微笑みながら、

「そう言えば……私達も同じような事、やったよね」

 そして胸の痛みを感じながらも、その名前を呟いた。

「和也」

 真子は夢を見た。

 それは中学時代の出来事。舞台はボランティア部の部室。肌寒い11月の話。時刻は夕暮れ。その日も何となく部室を訪れた真子と和也。窓際の椅子に向かい合わせで座っていた。もちろん他の部員はいない。だがこの二人にしても特に何をするわけでもない。真子はぼんやりとグラウンドを眺めていた。すると、

『なんかさぁ……暇じゃね?』

 和也が机に項垂れながら何気なく呟いた。真子は視線をグラウンドに向けたままで、どうでもよさげに、

『何よ急に……別にいつもの事じゃん』

『そりゃあ、お前はいつもの事だけどな。でもオレはすごく退屈してるんだよ』

『へえ。そういえば今日はここに来るの早かったね』

『そうなんだよ。今日は顧問来るから、軽音部には来ない方がいいって言われてよ〜』

『ふ〜ん。まあ辞めた奴が堂々と部室に居るわけにはいかないからね』

『そうなんだよな〜。だからすげえ暇なんだよ。真子なんとかしてくれよ〜』

 顧問との喧嘩。それが原因で軽音部を辞めた和也。そして世間体のため、無理矢理ボランティア部へ押し込められた。だが、辞めた今でも暇があれば軽音部に顔を出しているらしい。音楽が好きなのは変わらないようだ。そして、そんな和也を真子は羨ましく思う。だって真子はそんな風には考えられないから。前のサッカー部もなんとなくやっていただけだ。だから少し嫉妬してしまう。彼は自分と違い夢があるから。真子は僅かに不機嫌そうに、

『知らないわよ和也の事情なんて。そんなに暇なら先に帰れば?』

『ば〜か。彼女を置いて帰れっかよ』

『なっ、誰が彼女だっ!?』

『ああ。オレも嫌だな。お前みたいに色気のない女は』

『へっ?』

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マーティー木下@web漫画家
web漫画家です。 両親が詐欺被害に遭い、全てのお金と職を失いました。 3億円分程の資産を失いました。 借金は800万円程あります。 他に会社に再就職して、 親の老後資金と自分の為に 働きながら漫画を描いております。 どうかお力添えをよろしくお願いします。 拡散などをしていただけると非常にありがたいです。
マーティー木下

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オリジナル漫画は下記リンクから飛べますので是非ごらんください。

マーティー木下の代表作 自称いけづらの浅間君が主人公の漫画です。
いけづらってなんだろ、いけづらってなに。 自称いけづらの浅間愁と周りが繰り広げるぐだぐたコメディ漫画です。 短いページ数ですので、是非気軽にお読みください。

池面ーいけづらーhttps://mkinoshita-home.com/?p=908


小説家になろうにも掲載されている、私が昔書いたライトノベルの紹介です。
オリジナル小説エンジェルゲートあらすじ

少年、増田 輝希(ますだ てるき)は天使に取り憑かれていた。
「ご主人〜」
そう可愛らしい声で彼を呼ぶのは天使のミカ。
薄桃色のショートボブの少女だった。
「増田のマスター」
その隣で不機嫌そうに呟くもうひとりの天使レミ。
小麦色の褐色肌、さらっした黒の長髪を風になびかせていた。
この二人はタイプは違えど共に整った容姿をしており、何も知らない人がみれば羨むような状況だろう。だが、当の本人輝希の顔は浮かない。彼は二人の天使を交互に見て思うのだ。
一体、なんでこんな事になってしまったのかと。

*少年と天使が織りなすラブコメディです。

2011年頃に書いた作品になります。拙い作品ですがよろしくお願い致します。


小説家になろうにも掲載されている、私が昔書いたライトノベルの紹介です。

オリジナル小説ボラ魂あらすじ

私、真木真子は努力が嫌いだ。
禄那(よしな)市立美咲(みさき)高等学校に通う一年生・真木真子(まきまこ)。
毎日をぼんやりと過ごしていた彼女の前に、
ある日突然現れた先輩・椎野実(しいのみのる)。そして彼は戸惑う真子にこう言い放つ。
「ボランティア部に入ってくれ!!」

*ボランティア部を舞台にしたラブコメ作品です。2010年頃に書いた作品になります。
データが残っていたので、せっかくなのでサイトに順次掲載していきたいと思います。
めちゃくちゃ拙いですがよろしくお願いします。

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