オリジナル小説 ボラ魂4−2
「おいおい、真木。別に俺はエロ本を探しに来たわけじゃないぜ。ていうかお前が言った所って焼却炉じゃねえか。見つけても読めねえだろ」
「え、違うの? じゃあ何であんたがここにいるのよ?」
「ふっ。何故かって? それは俺こそが今日招かれたゲストだからだ」
そう言い口元に手を当ててニヒルに微笑む岡崎。そのまま教卓の前までツカツカと歩いて来る。真子は期待して損した。と言わんばかりの表情で、
「……柚菜先輩、ある人ってこのクズの事ですか?」
「ええ。この人の事よ。まあ、招いたと言うより岡崎君の方から相談に来たんだけどね」
「相談?」
「ええ。実はーー」
「ちょっと待ったー!!!」
急に大声を出した岡崎。腕を伸ばして柚菜の言葉を遮る。それを見て真子は不思議そうに、
「急にどうしたの岡崎?」
「いや、まあ、確かに相談に来たのは間違いない……だが」
「だが?」
「何で真木がここにいるんだよ?」
「何でって言われても、ただ自分の部活に参加しているだけだけど」
「ん? じゃあお前新しく部活に入ったのか?」
「そうよ。まあ部活っていうかボランティア同好会なんだけどね」
「へえ〜、そんなのがあったんだな。全然聞いたことなかった」
「まあ、私もこの前知ったんだけどね……あれ? それを知った上でここに来たんじゃないの?」
「ううん、全然知らねぇ」
「じゃあ何でこんなとこに相談になんて来たのよ」
「それはだな、」
「俺が誘ったんだよ」
声に反応して岡崎は教壇の方を振り返る。するとそこには復活した実の姿。岡崎はそれを見た途端に子供の様な笑顔で、
「師匠! そこにいたんですねっ!」
その言葉に対して実は誇らしげに、
「ああ、柚菜にヤラれて軽くトリップしていたトコだ。全くいつもの事とはいえ困ったもんだぜ」
「ひょーっ、さすがっす! 日の沈む前からエンジン全開ですなぁ!」
そう言いながら岡崎は胡麻をすり気持ち悪い笑顔を浮かべる。意味不明なやり取りだった。柚菜は横目で実を睨みながら不機嫌に呟く。
「なんか腹の立つ言い方ね。もう一回旅行させてあげようかしら」
「是非岡崎ごとお願いします。ていうか師匠って何なんですかね?」
「おっと。そういえば真木には言ってなかったな」
「何を?」
「この俺の新しいモテ師匠・ミートパスタ実様の事をだっ!!」
ドンッ! と宣言をする岡崎。その目は希望に溢れている。まるで救世主を見つけたかのようだ。一方、実はよほど嬉しかったのだろう。教壇に立ち自信満々に胸を張っている。それに対して柚菜&真子は、胡散臭い壷でも売られているかのような顔で、
「……アンタ、そのちっこいのにモテがあると思ってんの?」
「ええ。というか何? その売れない俳優みたいな名前」
「なっ、真木! 柚菜さん! このお方に対して無礼だぞっ!」
「そうだっ! そうだっ! 校内一のジャ煮顔を持つ俺に謝れっ!」
「え〜、だって先輩って明らかにモテなさそうですもん……実際どうなんですか柚菜先輩?」
「ええ。お察しの通りモテないわよ」
「ですよね〜」
「柚菜! お前はこの一年半何を見てきたんだよ! いくらカッコいいからって俺の顔ばっかり見てきたんじゃないだろうなっ!」
「ええ。そうね。科学の実験とか体育の度にハブにされて落ち込む顔を何回と見てきたわね」
「調子こいてすみませんでした!」
想像以上に酷い現実だった。真子は表情を暗くして、
「それ、モテ要素全くありませんよね……」
「ええいっ! そんなのはまやかしにすぎんっ! 真木お前は見ただろうっ! このお方の奇跡を!」
「は? 奇跡って何よ?」
「あれだよ。水澄が師匠に抱きついた時だよ」
その言葉で真子は思い出す。それは数週間前の出来事。朝 いきなり現れた実。そしていきなりカワイイと言い出して抱きついた千佳子。岡崎達下衆共を興奮させた一件だ。真子は呆れた顔で、
「……もしかしてアンタ、あれをみて弟子入りしようと思ったの?」
「あたりまえだっ! あんなのを見せられたらこのお方の下でモテ道を学ぶしかないだろっ!」
「いや、あれはち〜この趣味が異常なだけだから。実際この先輩はモテないって」
「そんなことはないっ! この人こそ真の学校一のモテ男だっ!」
再びバーン! と言い切る岡崎。実はその言葉によほど感激したのだろう。少し目を潤ませながら教壇から降りて来る。そして岡崎の横に立ってポンと肩に手を置き、
「岡崎君……キミはすごく良い子だね。これ黒飴だけど舐める?」
「師匠……オレ黒糖大好きですよ」
黒飴を渡しながら見つめ合う実と岡崎。相当に気持ち悪い絵面だ。なんだか話が脱線しつつもある。真子は会話の軌道を戻すために、
「まあ先輩がモテるかは置いといて、結局あんたは何しに来たの?」
「え? いや、だからちょっと相談があって来たんだよ」
「うん。だから一体何の相談なのよ?」
「いや、改めて言わなくてもさ、だから、ほら、あれだよ」
急に言葉を濁し始めた岡崎。少し恥ずかしそうにボソっと、
「どうやったら彼女が出来るかを聞きに来たんだよ」