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オリジナル小説 エンジェルゲート第4章ー18

エンジェルゲートサムネ

「ふ、なるほど」

 渡り廊下の内側の隅、そこにあったのは剥き出しのチクワが一本。天使の力の正体はどうやらこれのようだ、そしてこれがここにあるという事は、

「レミはこの力でオレより広範囲のレーダーを持っているに等しいというわけか」

 このチクワにはレミの力が込められており、まるでレミ自身がここにいるかのように周囲の状況を感知する事が出来る。狙ってここに置かれていたというわけではなく、これが学校全域に配置されていると考えていいだろう。

「ふむ」

 このままではイワンが彼女の感情や力を感知するより先にこちらの現在地を知られてしまう、その度に移動されてしまうとなるとレミの場所を特定するのは困難だろう。ならば、

「ならお前のその目を一つずつ潰していこうじゃないか」

 振り下ろした右足は練り物を粉砕し肉片と化す。そこからはもう天使の力は感じない。こうして彼女の監視カメラとなる練り物を見つけ次第に潰していく、そうすればそうするほどにレミはこちらの状況を把握出来なくなる。

 これはこれで面白い。やはりすぐに殺しはしない。もっと、もっとジワジワと彼女に恐怖を与えていこうではないか。

「レミ……?」

 意識を集中させると近くから天使の反応があった。渡り廊下からも見える、廊下を渡り切ったすぐ左側の教室だ。そこから感じる力はここにあった監視カメラ紛いの物とは違い、より強力な天使そのものの存在に近かった。一瞬レミかと思ったがイワンはその正体に心当たりがあった。

「いや違う……少年か」

 少年ーー増田輝希とレミの魂は混合しなかば結合状態にある、それに魂のほとんどを形成したのはレミの力。なのでレミと輝希の魂の色、感覚とでもいうのだろうか、とにかくそれは極めて近い状態となっていたのだ。

 だがイワンには分かる。レミの魂ならもっと強力な力を感じるはずだ。それに微かな混じり気、自分や赤土蛍の魂と同じ感覚を感じる。

「少年、覚悟は出来たのかな」

 口元に自然と浮かぶニヤけた笑み。イワンは彼等三人と対峙した時から決めていた事があった。

 それは少年、増田輝希は必ず最後に殺すという事だ。

 愛する少女ーー赤土蛍を失った少年。そして彼はこの後、さらに二人の天使の命を失う事になる。ここに来たという事は彼の中に再び宿ったのだろう。イワンに対する復讐心、殺意が。だがそれはこの後のレミとミカの死によってまた崩れ去るのだ。そして絶望と恐怖に塗りつぶされた少年をこの爪で殺す。赤土蛍と同じように首を切り落として。

「ふ、ふふ」

 故に、この悲劇を完結させるには輝希の存在は必要不可欠。逃げずに校舎へと彼が乗り込んできたのはイワンにとって好ましい展開だった。

 だがイワンは疑問に思う。少年は何故ここにいるのか、と。

 もちろんその目的はイワンを殺すためなのだろうが、問題はその役目だ。少年ーー増田輝希はレミの力で蘇ったとはいえただの人間だ。その身に天使に等しい魂を持っているとはいえ天使ではない彼はその力を使う事はできないし、それにより再生力は上がっているようだが、だからといって肉体に驚異的な力が宿ったわけではない。つまり他の点は普通の人と変わりはないのだ。

 輝希自身にはイワンと闘う力はないだろうし、それに高い回復力を有しているといっても、イワンの攻撃により一撃で生命を断たれるようなダメージ、例えば爪で心臓を貫かれる、首を刎ねられる、等を受けた場合はその回復力だって役にはたたない。

 だからイワンは思う。なぜ彼は一人であの教室で待機をしているのか。そしてイワンが導いた答えは、

 少年ーー増田輝希は囮だと言う事だ。

 このそこら中に配置された疑似監視カメラ。これによりレミにこちらの位置等が伝わっているのなら、彼女は輝希にも情報を伝えているはずだ。

 なのに彼は先程から特に動く様子はない、それに近くにレミの気配も感じない。

 だが少年をただ危険にさらすような事をレミはしない。と言う事は彼女は力を消して近くに潜んでいるはず、そして自分が少年に近づいたところを奇襲で攻めてくるはずだ。

 しかしこの奇襲を読まれているのはレミならばすぐ気付くだろう。なぜならレミ側にイワンの現在地が漏れているという事をイワンが認知している事に彼女は既に気付いている。ならなぜ無力な少年をオレから遠ざけない? これは何かある。イワンがそう警戒したうえでこちらに来る事は理解しているはずだ。そして、それすらも計算の内だろう。

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マーティー木下@web漫画家
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