オリジナル小説

オリジナル小説 エンジェルゲート第4章ー9

エンジェルゲートサムネ

『輝希はこんな事で死んじゃ駄目なの。彼にはもっと多くの事を知って欲しいの』

 そんな彼女のーー蛍の聞こえるはずのない声が聞こえた気がした。

 心の中で何かが崩れた気がした。なぜ僕が生きていたのか、本当の意味がやっとわかった。

 彼女が助けてくれたんだ。僕が彼女を助けたかったように。彼女に生きて欲しいと願ったように。

 彼女も僕が生きる事を望んでいたんだ。だから自分の命をくれたんだ僕に。

「あ……」

 遅れて溢れてきた涙はもう止まる事を知らなかった。蛍が首を刎ねられて死んだ事、蛍が自分の命と引き替えに輝希を助けてくれたという事、

 その事実を頭が受け入れた時、輝希の視界は真っ白になった。

「そうか、どうもおかしいと思ったんだ。これで納得がいった」

 やはり死亡報告装置は正しかった。増田輝希はあの日死亡していたのだ。しかしイワンの目論みによって彼は命を取り戻したのだ。彼が持つ天使の力によって。

「たしか、お前の力は感情を伝うんだったな」

 天使達はそれぞれの媒体を使い力を発揮する。それはレミだけではなく、ミカやイワンも然りだ。レミの場合それは練り物になるわけだが、イワンの媒体となるもの、それは生物が抱く強い感情だった。

「ああ。あの日、蛍は少年を救いたい、そして彼を失ったという強い感情を秘めていたからな。いとも簡単に生命力は移動出来たよ」

 絶望。悲哀。幸福。怒り。その想いの種類は何でもいい。とにかくイワンはその対象が強い感情を秘めていればいるほどに、その力を大きく使う事が出来るのだ。しかし、

「だが悪魔に、成りかけていたせいか、力の加減が分からなくてな。その少年に、命を再び宿すまでしか出来なかった」

 イワンにとって予想外の事態。本来ならば蛍の命を引き換えに、輝希の身体は傷を含めて完全に蘇生が出来るはずだった。だが記憶の混濁が影響したのか、また天使ではなく悪魔に成りかけていた事が原因か、その力はいつものように働いてはくれない。とにかくこの時のイワンが治せたのは輝希の命だけ、最低限の生命力までだった。

「なるほど、だから増田の身体は傷を癒すために求めたんだろうな……お前の力に近い、天使である私の力を」

「ああ。君の気配を感じたので、私はその場から離れたが、おそらくそう言う事なんだろうな」

 これでレミと輝希の魂が混じり合ってしまった事も納得がいった。輝希の身体はイワンの力によって未完成な蘇生をした。だから足りない部分を無意識に補おうとしたのだろう。イワンに似たエネルギーを持つ、その場に現れたレミの力を身体に吸収して、だ。

「それで、お前は命を失った蛍を蘇生させて一体何が目的だったんだ」

 そして、蛍から輝希の気配がした事も説明が出来る。輝希の身体の大部分を補ったのはレミの力だとしても、元々はイワンの力が関係している、そしてそれは蛍の生命を移動させたものだ。なので見た目に変化はなくとも今の輝希の魂は、レミ、イワンの力、それに蛍の魂が混ざり合った状態となっている。つまり正確に言えば、蛍から輝希の気配がしたのではなく、輝希から蛍の気配がしたという訳なのだ。

「ふむ、何が、という事もなかったが、ただ演出したかったんだよ」

 そう呟くイワンは先程までに比べてどこか様子が違った。だがそれは以前の天使だったイワンの様という訳でもない。それは化物に似つかわしくない人間らしい仕草で、

「衝撃性。僕は物語にはそれが必要だと思うんだよ。愛する者の残虐的な死、救ったものを奪われるという絶望、精神、肉体を締め付けるような痛み。それらが物語をより良くするんだよ」

 ふむ、とイワンはもう一度ザラつく黒い顎を手で擦る。彼にそんなクセはない、でもその手慣れた感じは何十年も繰り返したクセのように見えた。

「レミちゃん、イワンは何を言っているんです?」

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マーティー木下@web漫画家
web漫画家です。 両親が詐欺被害に遭い、全てのお金と職を失いました。 3億円分程の資産を失いました。 借金は800万円程あります。 漫画が好きです。コンビニも好きです。
マーティー木下

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マーティー木下の代表作 自称いけづらの浅間君が主人公の漫画です。
いけづらってなんだろ、いけづらってなに。 自称いけづらの浅間愁と周りが繰り広げるぐだぐたコメディ漫画です。 短いページ数ですので、是非気軽にお読みください。

池面ーいけづらーhttps://mkinoshita-home.com/?p=908


小説家になろうにも掲載されている、私が昔書いたライトノベルの紹介です。
オリジナル小説エンジェルゲートあらすじ

少年、増田 輝希(ますだ てるき)は天使に取り憑かれていた。
「ご主人〜」
そう可愛らしい声で彼を呼ぶのは天使のミカ。
薄桃色のショートボブの少女だった。
「増田のマスター」
その隣で不機嫌そうに呟くもうひとりの天使レミ。
小麦色の褐色肌、さらっした黒の長髪を風になびかせていた。
この二人はタイプは違えど共に整った容姿をしており、何も知らない人がみれば羨むような状況だろう。だが、当の本人輝希の顔は浮かない。彼は二人の天使を交互に見て思うのだ。
一体、なんでこんな事になってしまったのかと。

*少年と天使が織りなすラブコメディです。

2011年頃に書いた作品になります。拙い作品ですがよろしくお願い致します。


小説家になろうにも掲載されている、私が昔書いたライトノベルの紹介です。

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私、真木真子は努力が嫌いだ。
禄那(よしな)市立美咲(みさき)高等学校に通う一年生・真木真子(まきまこ)。
毎日をぼんやりと過ごしていた彼女の前に、
ある日突然現れた先輩・椎野実(しいのみのる)。そして彼は戸惑う真子にこう言い放つ。
「ボランティア部に入ってくれ!!」

*ボランティア部を舞台にしたラブコメ作品です。2010年頃に書いた作品になります。
データが残っていたので、せっかくなのでサイトに順次掲載していきたいと思います。
めちゃくちゃ拙いですがよろしくお願いします。

https://mkinoshita-home.com/?p=2446
https://mkinoshita-home.com/?p=2975
https://mkinoshita-home.com/?p=3088
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