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無料オリジナル小説 ボラ魂2ー5

実の物言いが癪しゃくに障り、思わず声を荒げる真子。教室には、少し気まずい空気が流れる。

「真子……」

 千佳子の心配する声。彼女には、前に少し話した事があった。ガラの悪いボランティア部に所属していた事を。それを思い出したのだろう。いつもより声色が低い。

「っ、ごめんっち〜こっ。気にしないでっ」

 慌てて平然を装う真子。

「……実、とりあえずもう行こう」

 そこで声を発したのは、以外にも柚菜だった。

「え? なんで」

「おっぱいばっか見てる実がムカつくから」

「俺そんなみてないよ!?」

「む〜」

 千佳子は頬を膨らませ、手でブレザーの胸部分を隠す。

「いやホント全然あんまり少しだけしか見てないよ!」

「いいから、早く帰るよ」

「ちぇっ、わかったよ〜。 んじゃまたな」

 柚菜は場の空気を読んだのだろう。二人は荷物を持ち、席を立つ。全く場を理解していない実を急かしながら、共に教室を後にした。

「……真子〜、このワケノ〜シンノ〜スっての、めっちゃデロンデロンしてるよ〜」

 千佳子が箸でイソギンチャクを左右に振る。その度にプルプルと不気味に震えた。

「……うん」

 千佳子の優しさに和み、真子は微笑んだ。

          ★

 昼食後。二人は荷物を置きに教室へ。そこで用事のある千佳子と別れ、真子は図書室へ向かう。静かな所で落ち着きたい。そう考えたからだ。

 校舎のB棟二階。図書室。真子は扉を開け、中へ。静かな室内。教室二個分の空間。数々の本棚。勉強や読書をする学生。だが、机は半分以上空いている。楽に座れそうだ。

「げ……」

 真子は受付を見る。そこには柚菜がいた。椅子に座り、本を読んでいる。題名は“猫の習性”。

「なんで、ここにいるんですか?」

 無視するのもアレなので、とりあえず話しかける。柚菜は一瞬だけ本から目を離し、真子を見上げる。

「? ああ、あなたか。私、図書委員だから」

 そう言って視線をまた本へ。まあ、確かに様になっているな。と真子は思った。

「そうなんですか……てかっ、ええと」

「何?」

「さっきはありがとうございました」

「別に、なんか実が巨乳ばっか見ててムカついたから」

「はあ」

「それに、強引でイラっともしたし」

「ああ〜、はい……」

「ったく、いつも無理矢理に巻き込んで、もうっ」

 何かを思い出したのか、柚菜は一人言のように呟く。ほんのり顔が赤い。ちなみに相変わらず、視線は本に向けたままだ。

「何か言いました?」

「なんでもない。まあ……悪い奴じゃないから、出来れば嫌いにならないでね」

「それは、なんとなく解りますけど……」

「それにあいつ、あれぐらいじゃ諦めないから」

「え?」

 直後、ガラっと扉が開く。

「よ〜う。真子ここに居たのか」

「な、椎野先輩……」

 てっきり部の勧誘かと思いきや、

「次の時間の科学、場所が変わって第二実験室だってよ」

「なんで先輩経由でクラスの情報がくるんですか!?」

「いや〜千佳子に頼まれてさ。あっ、あと放課後のボランティアは第四準備室だぜ」

「ドヤ顔うざっ。興味ないんで、早く行って下さいよ」

「なんかキツくない? ハッ!? さては次の時間に科学の実験でハブにされるかも。って焦ってんのか!? 俺と同じだな!!」

「なっ! ハブになんてされません! 普通にいっぱい友達いますっ!!(まあ、誇るほどはいないけど)」

「嘘付け! 千佳子以外みたことないぞ! それに友達いる奴がヒトカラ行くわけないだろ!!」

「だからっ、みんな放課後は部活なんですよ!」

 ダンッ!!

「二人とも、黙れ」

 机を叩く音と声に振り向くと、室内の生徒&柚菜が、真子達を睨みつけていた。

「はっ、すみません」「や〜い、怒られてやんの〜」

「(イラッ)実、もう図書室出禁ね。あと、ついでに死刑」

「俺、出禁のついでに死ぬの!?」

「いいから、外行きなさいっ」

「ちぇ〜、わかったよ。じゃあな真子、大事なのはチームワークだぞ」

「だから〜……」

さすがに場所を弁わきまえたのか、大人しく廊下へと去って行く。真子も友達がいる事を証明したかったが、堪えた。柚菜は大きく溜め息をして、

「ったく、あいつは」

「なんかすみません……」

「別に気にしなくていいわよ。あいつがしつこくてウザイのはいつもの事だし。まあ、あなたもスゴくうるさかったけど」

「うぅ〜はい……」

 落ち込む真子。柚菜は薄く微笑みながら、

「まあ、でも」

「はい?」

「否定ばかりしないでちゃんと見てみると、新しい事に気付けるかもね」

「……考えてみます」

「そう。ま、私には関係ないけどね」

 そう言って柚菜は、再び本に視線を戻した。 真子は適当な席に腰を下ろし、適当な本に目を通す。

 案外、柚菜はいい人なのかもしれない。

 そんな事をなんとなく思いながら、真子は残りの休み時間を過ごした。

         ★

 

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マーティー木下@web漫画家
web漫画家です。 両親が詐欺被害に遭い、全てのお金と職を失いました。 3億円分程の資産を失いました。 借金は800万円程あります。 他に会社に再就職して、 親の老後資金と自分の為に 働きながら漫画を描いております。 どうかお力添えをよろしくお願いします。 拡散などをしていただけると非常にありがたいです。
マーティー木下

この度はこのようなクソ底辺web漫画家のサイトにお越しいただきありがとうございました。
日常のつぶやきみたいな記事が多いので気軽に読んでください。

オリジナル漫画は下記リンクから飛べますので是非ごらんください。

マーティー木下の代表作 自称いけづらの浅間君が主人公の漫画です。
いけづらってなんだろ、いけづらってなに。 自称いけづらの浅間愁と周りが繰り広げるぐだぐたコメディ漫画です。 短いページ数ですので、是非気軽にお読みください。

池面ーいけづらーhttps://mkinoshita-home.com/?p=908


小説家になろうにも掲載されている、私が昔書いたライトノベルの紹介です。
オリジナル小説エンジェルゲートあらすじ

少年、増田 輝希(ますだ てるき)は天使に取り憑かれていた。
「ご主人〜」
そう可愛らしい声で彼を呼ぶのは天使のミカ。
薄桃色のショートボブの少女だった。
「増田のマスター」
その隣で不機嫌そうに呟くもうひとりの天使レミ。
小麦色の褐色肌、さらっした黒の長髪を風になびかせていた。
この二人はタイプは違えど共に整った容姿をしており、何も知らない人がみれば羨むような状況だろう。だが、当の本人輝希の顔は浮かない。彼は二人の天使を交互に見て思うのだ。
一体、なんでこんな事になってしまったのかと。

*少年と天使が織りなすラブコメディです。

2011年頃に書いた作品になります。拙い作品ですがよろしくお願い致します。


小説家になろうにも掲載されている、私が昔書いたライトノベルの紹介です。

オリジナル小説ボラ魂あらすじ

私、真木真子は努力が嫌いだ。
禄那(よしな)市立美咲(みさき)高等学校に通う一年生・真木真子(まきまこ)。
毎日をぼんやりと過ごしていた彼女の前に、
ある日突然現れた先輩・椎野実(しいのみのる)。そして彼は戸惑う真子にこう言い放つ。
「ボランティア部に入ってくれ!!」

*ボランティア部を舞台にしたラブコメ作品です。2010年頃に書いた作品になります。
データが残っていたので、せっかくなのでサイトに順次掲載していきたいと思います。
めちゃくちゃ拙いですがよろしくお願いします。

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