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無料オリジナル小説 ボラ魂2ー9

「え? 今なんて?」

「わかったって言ったんです!!」

「え? マジ? じゃあ」

 希望が見えた。実は喜びで痛みを忘れて、立ち上がる。

「ただし! 条件があります!!」

「証券!? 株主だったのか!?」

「うるせぇ!! 入部を賭けて勝負ですよ!!」

「後輩にうるせえって言われた……」

「先輩が空気読めないからですよっ」

「まあいいやっ。で、勝負って何すんの?」

「ええと〜、それはっ〜」

「考えてなかったのかよ」

「仕方ないじゃないですか! 今思い付いたんですから!」

「ならさ〜、スポーツ勝負で決着をつけようぜ」

「む……別にいいですけど」

「よし、じゃあ種目はテニスなんてどうだ?」

 実の唐突な提案。(まあ、唐突なのは真子も同じだが)に顔を歪ませる。

「げっ、テニスですか!?」

「なんだよその反応? 別にいいだろ。経験者のお前の方が有利なんだし」

「そうですけど、あんまいい思い出がないっていうか……」

「なんだよ〜。ボランティアといい、テニスといい、お前どんだけ根暗ガールなんだよ」

「ムカっ! わかりましたっ、じゃあやりましょうよ! ただし、負けたら今後一切、私に関わらないでくださいよ!」

「よ〜しいいぜ。なら、すぐやろうぜ」

「いいですよ! 近くの市民コートで勝負ですっ」

「オッケー!」

「じゃあ、ちょっと着替えてくるんで、外で待ってて下さい」

「ほ〜い」

 実に背を向け、奥へ行く真子。そこでハッと、冷静になり、

「……あれっ、私とんでもない約束してない!?」

 せっかくの休日。ゆっくりするはずだった。だが実の来訪。感情的になり持ちかけてしまった勝負。やりたくもないテニス。全てが最悪だった。でも、後悔しても手遅れ。

「はぁ〜あ〜、まあ、もう仕方ないか〜〜」

 真子は項垂れながら自室へと向かった。

 なぜ自分は、こんな約束をしたのだろう。頭に血が昇っていたのだろうか。多分そうだうと、真子は考える。

 でも、彼女は気付いていなかった。自分を繋ぐ鎖が、徐々に解けている事に。

「お待たせしました……はぁ〜、なんでこんなことに」

 20分後。真木家の玄関前。四坪程のスペース。不満を呟きながら、真子が段差を降りて登場。服装はもちろん外着。デニムのロングスカート。上はTシャツ。さらに、その上にソフトベージュのジップパーカーを羽織り、花柄のハンドバックを肩に掛けていた。ポニーテルもばっちりだ。

「ブツブツ言うなよ〜。自分で言ったんだろ〜?」

「そりゃあ、そうですけど……はぁ」

「だからそんな落ち込むなよ。ってあれ? その服装……ふーん」

 実はじっくりと真子を眺める。まるで品定めをするように。上から下まで。真子は不思議に思い、

「はい? どうしました?」

「いや、お前って女の子らしいイメージがなかったけど、結構似合ってて可愛いなって思ってさ」

「なっ、急になんですか!? 褒めてんですか!? そうなんですか!? だとしても全然嬉しくありませんよ!?」

「あ〜、また照れてんのか〜?」

「うるさい! そう言うのはもういいです!」

「まあ、そうカッカしなさんなって。ってあれ? お前ラケットとかシューズは?」

「えっ?」

 実の素朴な疑問。確かに、真子はそれらしき物を持っていない。一瞬動揺した後、真子はバツが悪そうに目を逸らしながら、

「あの……ありません」

「あり? テニス部だったんだろ?」

「いや、なんか退部した時イラついてて……そのまま勢いで、叩き折っちゃいました……」

「叩き折るとか、お前、女のすることじゃなくね?」

「違うんですよっ、キレて地面にぶつけたら、『あれ? これ折れたんじゃね?』って感じで、あっさり曲がっちゃったんですよ!」

「ふ〜ん」

「まっ、まあ、今はそんな事いいじゃないですか」

「うん、そうだな〜。どうせレンタル出来るしな。場所は市民テニスコートでいいんだろ?」

「まあ、はい。近いし妥当ですよね……」

「なんだよ〜。もっと喜んでいいんだぜ? だって負ければ、俺と一緒に部活ができるんだから」

「だからそれが嫌なんですよ!!」

「あはは〜、またまた〜」

「いや、今のは照れた訳じゃありませんから!? 素で嫌なんですよ!?」

「まあまあ、落ち着けって。よ〜し。じゃあ、乗ってくか?」

「ったく〜。って、はぇ? 乗ってくて、肩とかにですか?」

「……なんでお前を肩車して、テニスコートまで行かないといけないんだよ」

「いや、バカなんでありえるかと思って」

「お前な〜。違うって、あれにだよ」

 呆れ顔の実。左後方を指差す。真子もそちらを見る。そこには家の塀、母の趣味である家庭菜園に使う花壇、同じくプランター、それと、壁際にバイクが停まっていた。

「え? あれ、先輩のですか?」

「うんっ。便利だから買ったんだ」

 車種はスズキのボルティー。中型の250CC。同クラスに比べ小柄な車体。実の身長にもなんとか合いそうだ。ちなみに色は銀。シートは茶色。おそらく中古。全体的に傷が目立っている。

 真子はバイクをじっと眺める。あの似合わない格好はこのためか。と一人納得。そして、怯えているような、少し暗い声で、

「……免許は持ってるんですよね?」

「もちろん。あれは中型だけど、大型免許まで持ってるぞ。えっへん!」

「……そうなんですか……あれ? 大型バイクって18歳からですよね?」

「うん。俺18歳だけど?」

「へ? いま高2ですよね?」

「ああ。俺、1年留年したから」

「はい!?」

「いや〜、前の学校で一年の時に留年したんだけどさぁ」

「前の学校? え?」

 衝撃の事実。事態についていけず動揺する真子。しかし、実はいつもの笑顔で、

「いや〜、色々あってさ〜。まあとにかく、その学校で一年をまたやり直すのも嫌だったからさ、それでこっちに転校してきたんだ」

「はあ……先輩にも色々あるんですね」

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マーティー木下@web漫画家
web漫画家です。 両親が詐欺被害に遭い、全てのお金と職を失いました。 3億円分程の資産を失いました。 借金は800万円程あります。 漫画が好きです。コンビニも好きです。
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