オリジナル小説

無料オリジナル小説 ボラ魂2ー8

「(ムカっ)まあ、確かにしつこい勧誘はなくなりそうですけどね……」

『だろ〜?』

「でも」

『でも?』

「それじゃ本末転倒すぎるだろぉ!! ばかぁ!!」

 ピッ! ガチャン!!!

 例の如く電話を切って、乱暴に充電器へ。

「はぁ〜、ったく、あの先輩は〜。これじゃあ、こっちの気分も萎える一方だっての〜」

 プルルルッ! プルルルッ!

 三回目の呼び出しが鳴った。

「たくっ、いいかげんにしろぉ〜!」

 真子は廊下を駆けて、リビングから玄関へ猛ダッシュ。スライディングで、親機の電話回線をブチ抜く。呼び出し音は完全に消えた。

「ふぅ〜、これでよしっと」

「真子〜。さっきからうるさいよ。何してるの〜?」

 居間から母の声。どうやらまる聞こえだったらしい。

「ごめーん。しつこいセールスからの電話だったから。もう大丈夫だから〜」

「そ〜う? ならいいけど」

 適当に言って誤摩化す。そしてリビングの方へ歩いていく。

「まあ、めんどくさいって意味では、間違ってないよね」

 ピンポーン!

「ん?」

 インターホンのよく響く音が、来客を告げた。真子は思わず玄関を振り向く。

「宅配便かな?」

 小走りで玄関に向かう。洋式の小じゃれた広い玄関だ。そして、そのドアを開くと、

 ガチャ!

「ようっ真子」

「なっ、先輩!」

 そこには実がいた。服装はシングルライダースジャケットに、オーバーパンツ。共に黒色。屈託のない笑顔で片手を挙げていた。

「なんで家知ってるんですか!?」

「え? 担任から名簿盗んだ」

「なにさらっと犯罪してるんですかっ!!」

「まあ気にすんなよっ。別に悪用するわけじゃないし。ただ勧誘に使うだけだから」

「その勧誘がヤダなんですよっ」

「大丈夫だって〜。架空請求とか来る訳じゃないし〜。て言うか、お前そのパジャマ幼いな〜」

 ニヤニヤ顔の実。ピンクの水玉模様パジャマを見ながら言う。

「なっ、好きなんだからいいでしょ!? そういう先輩だって、カッコつけたつもりでしょうけど、全然似合ってませんからね!!」

「あ〜、指摘されて照れてる〜。気持ち悪い〜」

「こっのぉ〜〜」

「真子〜、さっきから誰と喋ってるの?」

 奥の方から母の声。

「はっ、ママっ! 気にしなくていいよ! 変な小さいのを追い返してるだけだからっ!」

「ひどくね!? ネズミ扱いかよ!?」

「さっきから、うるさいわね〜……あら? はじめてみる子ね〜」

 願いも悲しく母の登場。真子はややこしくなる予感が、すごくした。

「はじめまして〜、真子の先輩の椎名です!」

「元気でカワイイ子ね〜。あらっ、もしかして、真子のコレ(彼氏)?」

 右手の親指を立てて、彼氏サインを作る母。すかさず真子は右手を握りしめ親指を下に向け、

「違うって、こっち(デス)だよっ」

「いや、どっちだよそれ!?」

「もうっ、真子ったら。椎名君に失礼でしょ」

「そうですよね!? ほんと真子は俺に冷たくて! あれっ、てかおばさんは普通に胸あるな」

「なっ、こっちを哀れむ目でみるなぁ!!」

「真子っ!! 椎名君は先輩でしょ! ちゃんと敬語を使いなさい!」

「そうだぞ、敬え! 敬え!」

「うぅ〜もう! ややこしくなるから、ママはちょっとあっち行ってて!」

「あっ、ちょっと、真子」

 強引に背中を押して、居間に誘導。これ以上話をめんどくされたら堪ったもんじゃない。

「はぁ〜もう」

「いや〜お疲れっ」

 居間から戻って来た真子。屈託のない笑顔がお出迎えだった。

「先輩が来たから疲れたんですよっ!」

「まあ、いいじゃん。そんなことは。それよりボランティアやろうぜ」

「そんなコンビニ行こうぜ。みたいなノリで言われてもやりませんよ!」

「え? じゃあ、俺ここまで来た意味ないじゃん?」

「知らないですよ! 勝手にきたんですから!」

「そんな〜頼むよ〜〜」

「知りませんっ。早く帰って下さい!」

「だからぁ〜頼むって、言ってんだろぉ! この貧乳がぁ!!」

「ふにぇあ!!」

 痺れを切らした実。なぜか真子に抱きつく。脇腹をがっちりロックされた。突然の奇行。真子は激しく動揺。裏返った変な声が出た。ちなみに顔は真っ赤だ。

「は、離せバカぁ!!」

「嫌だ!」

「子供かよ!!」

「なんとでも言えっ! 入ってくれるまで、離さないからなっ!」

「このっ〜〜、いい加減に」

 抱きつく実の右腕。それを真子は無理矢理に身体から剥がす。さらに両腕で固定。そして体勢を整えて、

「しろぉお!!」

 ズドーン!!!! と見事な一本背負いが決まった。

「ぐおぉお〜〜!! 背中がぁぁ!!! ヒィイィィィイ!!!」

 床に叩き付けられた実。とてつもない痛み。猛スピードで地面を這い回る。真子は赤面状態。乱れた呼吸を直しながら、

「はぁはぁ。色んなトコ触ってたし、全くもうっ」

「ヒィイィイイ!! 痛いぃいぃぃ!! え? 触られて困るようなものあったか?」

「ムっ!!」

 ズン!! と顔面近くに踏みつけ。

「うぉおお!! 今ぜったい顔ねらっただろぉお!!?」

「う〜〜、この人はもう、ホントに〜〜……はぁあぁ〜〜〜、ったくもう……わかりましたよ」

ABOUT ME
マーティー木下@web漫画家
web漫画家です。 両親が詐欺被害に遭い、全てのお金と職を失いました。 3億円分程の資産を失いました。 借金は800万円程あります。 漫画が好きです。コンビニも好きです。
こちらもよろしくお願いします
オリジナル小説

オリジナル小説 エンジェルゲート第1章ー5

2023年1月24日
3億円詐欺られたweb漫画家・マーティー木下の部屋
翌日3月7日。彼は自室で目を覚ました。学校に寝坊しそうになった時みたいにバッとベットから上体を起こしてあたりを見渡す輝希。そこにはまるでいつのも様に自分の部屋が広がっていた。なぜ …
エンジェルゲートサムネ オリジナル小説

オリジナル小説 エンジェルゲート第3章ー7

2023年2月4日
3億円詐欺られたweb漫画家・マーティー木下の部屋
「あ、いやそうじゃなくて」  と隣を不安そうに振り返る輝希。するとそこには想像の斜め上を行く光景が。 「あ、あ、ま、増田さんのか、彼女、彼女? 私が? 嘘だろうが、お …
エンジェルゲートサムネ オリジナル小説

オリジナル小説 エンジェルゲート第2章ー13

2023年1月30日
3億円詐欺られたweb漫画家・マーティー木下の部屋
「……蛍ちゃん」 「え……」  時が止まったとは、まさにこの様な状態を言うのだろう。部屋からはテレビの音だけが流れており、次の瞬間ボッとまるで効果音が聞こえてきそうな …
オリジナル小説

オリジナル小説 ボラ魂3ー3

2024年5月19日
3億円詐欺られたweb漫画家・マーティー木下の部屋
「え〜と、じゃあ、ゴホン」  黒板前の教壇へと立った実。わざとらしく咳払いを一回。ちなみに柚菜はその隣の椅子にちょこん、と座っている。真子は黒板正面の席に着き待機。すると実 …
エンジェルゲートサムネ オリジナル小説

オリジナル小説 エンジェルゲート第2章ー17

2023年2月1日
3億円詐欺られたweb漫画家・マーティー木下の部屋
「そうですねっ。せっかく私達のために作ってくれた料理なのに、グリーンピース一粒とは言え無駄にしてしまい申し訳なかったです」 「うん。お前等二人とも僕に失礼だから。僕も毎日君 …

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です