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無料オリジナル小説 ボラ魂 1ー2

男はビシッと言い切った。腕組み仁王立ちで。ボランティア部に入ってくれ、と。

「はぇ?」

 真子の間抜け声。当然だった。帰宅部の真子。先程まで駅前にいた真子。一人楽しく虚しくカラオケな真子。別に寂しくない。嘘、やっぱ寂しい。そこへ突然現れた男。姿をみる間もなく、あっという間に拉致られる。その目的は、

「ボランティア部に入ってくれ?」

「うん!!」

 男はキッパリ。

「……はぁ」

 げんなりだった。自分は何を期待していたのだろう。

 真子は帰宅部だ。放課後は直帰。それか寄り道。つまり、

「……もう帰りますね」

「ちょっ、話し聞けよっ!!」

 がしっ、と肩を掴まれる。相変わらず力強い。動けない。

「……わかりました」

「うんうん、わかってくれたか」

 笑顔で肩から手をどける。

「いやっ、やっぱわかんないです!!」

 我ながら、ナイスフェイントだ。真子は自画自賛。軽やかに男の横を抜け、廊下にーー

「おっと」

「へぶっ!!」

 脱走失敗。足をかけられた。派手に躓く。顔から床へダイブ。すごく痛い。

「あぅ……」

 真子は鼻を押さえて、立ち上がる。顔がズキズキ痛む。

「ごめん、なんか逃げる気満々だったから、つい」

 相変わらず笑顔な先輩。悪意のない微笑みだ。だから逆に腹立たしい。真子は満面の笑みで敵意を込め、

「いや、そうなんですけどね。超帰りたんいで」

「そんなこと言わず、ちょっと話そうよ」

 グイグイ背中を押され、教室真ん中、向かい合った机の所へ。もう仕方ない。こうなったら、適当に相手に合わせよう。

「はあ、なんでこんなことに……」

「まあ、元気出せよ」

 落ち込む真子の肩を手でバシバシ。糞だ、この先輩。真子は殺意の視線を送る。無意味だったが。

「もうホント……早くして下さいよ」

「まあまあ、そう悲観するなよ。世の中には無理矢理に拉致られて、変な組織に入れられちゃうパターンだってあるんだぞ」

「それ完全に今じゃないですか!!」

 強く大きいツッコミが、第四準備室に響いた。

         ★

 禄那よしな市立美咲みさき高等学校。平均的な偏差値。特徴のない茶色のブレザー制服。既存学科は普通科のみ。いたって普通の高校だ。

 そこにある、とある教室。第四準備室。

 校舎のB棟。二階の奥にある特別室。何の授業や部活にも使われていない不思議な教室。

「ボランティア部の部室だったんだ……」

 呟いたのは真子。椅子に座りながら小さく呟く。

 時刻は六時半。十月の空はかなり暗い。大気も冷たい。でも真子は帰れない。用意された椅子に座り、机を挟んで小柄な先輩ーー椎野実しいのみのると向かい合う。

「でもボランティア部なんて、聞いた事ないですよ? 学校紹介でも聞きませんでしたし」

 実はニッコリ笑って、

「まあ、正式には部じゃないけどね。人少ないから」

「じゃあ、同好会ですか?」

 六人以上で部活、三人以上で同好会。それが美咲高校の規則だ。

「うん。きみを入れて三人だから、同好会だよ」

「小声で私を含めないでください!!」

 真子はさらに呆れて溜め息。だが実は懲りずに、

「まあ、あれだよ。入って。ボランティア部に」

「……またですか」

 さすがにしつこい。またキレそうだ。でも真子は堪える。それではキリがない。一度深呼吸して、

「……なんとしても、部(?)員を入れたいんですよね…… まあ、人の少なさには同情しますけど……」

「わかった。じゃあ、この入部届けを書いて、担任に出しといてね」

「何がわかったの!? 入るって言ってませんよ!」

「えぇ!! 違うの!?」

「いや、同情しただけですからっ」

 ブンブン手を振り、誤解を解く。ここでキレてはいけない。

「なんだ、そっかぁ……」

 実のテンションはダウン。再び椅子に腰掛ける。だが口元には笑み。なにか嫌な予感がした。実は手を組み、何かを思案するポーズをとる。そして、

「いや〜〜俺も同情はするよ」

「はい?」

 疑問に思う真子に、満面の笑みで、

「いや、一人でカラオケ行ってたことだよ」

「なっ!! このタイミングでそれを!?」

 完全な不意打ちだ。顔が赤くなるのがわかる。思えば確かに恥ずかしい。見られたくなかった。

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マーティー木下@web漫画家
web漫画家です。 両親が詐欺被害に遭い、全てのお金と職を失いました。 3億円分程の資産を失いました。 借金は800万円程あります。 漫画が好きです。コンビニも好きです。
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