「どうしーー」
どうしてここに? 動揺しながらそう言おうとする真子。すると正面から岡崎、奈川、松野が、
「ふぉ〜〜!!! 一年随一の美少女と噂される葉月美子がなぜここに〜〜!!」
「ふぇっ〜〜!! やべぇ近くでみるとマジ可愛いしょっ〜〜!!」
「ふぃ〜〜!! オレここに来てよかったすわっ〜〜!!」
「ほぉ〜〜、すごく奇麗な人だね〜」
口々に大声を上げて発狂する下衆3人組と普通の反応をする千佳子。美子はその異常な光景を目の前にしても明るい笑顔のままで、
「あはは、なんだか気持ちの悪い人達だね」
「うん……ところでどうしてここに?」
「ん〜、実さんがなんか面白いことをやるから来なって」
「はあ……やっぱりこの人か」
呆れながら溜め息を吐く真子。ジロリと右側にいる実を睨みつける。実は片手を挙げながら陽気に、
「おうっ、美子久しぶりだなっ」
「久しぶり実さん。柚菜さんも久しぶりですね」
「ええ。久しぶりね美子。部活は相変わらず頑張っているの?」
「はい順調ですよ。今日は基本練習だけだったんでなんとか来れました」
「そう。わざわざ悪かったわね」
「いえいえ」
そう言い互いに微笑む二人。どうやら柚菜とも知り合いのようだ。まあ先輩と仲が良いのなら柚菜先輩とも知り合いでも当たり前か。と真子は心の中で納得しながら、
「あれ? じゃあ美子もこのよく解らない会に参加するの?」
「ん? いや先輩からは何も聞いてないんだけど結局何をすんの?」
「え、何って、う〜ん……そこの男三人がどうやったらモテルか考える会議?」
「へ〜、ふ〜ん」
呟きながら美子は目の前の男三人を見つめる。岡崎達は顔を赤くしながら、
「おい、学園一の美少女が俺達を見ているぞ。いかん興奮してきた」
「ドキドキ。緊張しますな」
「ドキドキ。堪らんですな」
各々気持ち悪いコメントをする三人。美子はニッコリ笑って、
「うん。全員確かにモテなさそうだね」
「グッボォ! 蔑まれているのに嫌な気分じゃな〜〜い!!」
「ホントだぁあ!! 逆に気持ちいい〜〜!!」
「笑顔がまぶしい〜〜!!!」
全く褒められていないのに笑顔で狂気の声を上げる3人。真子は怯えながら、
「モテなさそうってか、もう気持ち悪いレベルなんだけど……」
「あはは確かに。よし、いいよ。私も混ぜてもらおうかな」
「ホントに? ただの時間の無駄になるかも知れないよ?」
「別にいいよ。楽しそうだし。ね、実さん?」
「ああ、まあ軽い気持ちでひとつよろしく頼むぜ」
「あはは、任せといてよ。で私はどこに座ればいいの?」
「おう、じゃあ全員揃ったし席替えをするか。千佳子は柚菜の席に移動して柚菜は俺の隣に。で美子は女子サイドに椅子を持ってきて座ってくれ」
「は〜い」「ええ」「了〜解」
立ち上がり各々言われた行動をとる三人。結果席順は、窓側は前から岡崎、奈川、松野。廊下側は前から真子、美子、千佳子。そして教卓側は左から柚菜、実の順番になった。
「よし、じゃあさっそくモテ男流合コン式実践講座を始めるか」
キリっと前を見てそう告げる実。真子はそこで不安そうに手を挙げて、
「あの、先輩」
「ん? なんだ真子」
「最初から気になってたんですけど、結局それは何をする講座なんですか?」
「ああ、これは合コンを模した実践でイカした立ち振る舞いを覚えてモテ力を高めていく作戦だ。どうだ、すごくモテ男っぽい発想だろう?」
「さ〜すがっす! モテトレーニングを考えさせたら師匠の右に出るものはいね〜ぜ!」
「ひゅ〜、高まるっしょ〜〜!」
「マジ期待大っすわ〜〜!」
実の発言で異常にテンションを上げる岡崎達。対して真子は本当に申し訳なさそうな顔を浮かべる。少し俯きながら美子と千佳子の方を向き、
「……二人とも本当にごめんね。今から何も得る物がない無駄な時間が始まるから」
「「「真木が本気で謝った!?」」」」
驚愕する岡崎達。美子と千佳子は真子に対して微笑みながら、
「いいんじゃない? たまにはこういう息抜きもしたかったし」
「あは〜。そうそう。気にしなくていいよ〜」
「……うん。でもなんかごめんね」
どうやら二人が特に嫌がっている様子はない。だがそれでも再び申し訳なさそうに呟く真子。実は不敵な笑みを浮かべて、
「真子。何も得るものがないなんて言ってられるのも今のうちだぜ……よしじゃあ柚菜、設定を発表してくれ」