「よーし。じゃあここいらでまったりと会話でもしません?」
再び各々の席へと戻った8名。岡崎もなんとか息を吹き返した。すると胡散臭い笑顔を浮かべてそんな事を言う。奈川と松野もそれぞれ怪しい程の笑顔で、
「わー。岡崎さんそれ素晴らしいですねー。じゃあ何について語り合います?」
「あ、じゃあじゃあ奈川さん。恋愛の話なんてどうですか?」
「あー。松野さんそれナイスですね。じゃあ好きな異性のタイプを全員に聞いていきません?」
「「それいいですねー」」
事前に打ち合わせした感バリバリの会話運びをする岡崎達。真子は呆れながらジト目で、
「いやいや、何今の超不自然な会話。ただ美子達の好みを聞きたいだけじゃない」
「そんなことねぇよ。ただ好きなタイプを知りたいだけだ」
「だから私そう言ったよねっ!?」
岡崎の意味不明な返しに対してツッコむ真子。すると左隣から美子と千佳子が微笑みながら、
「まあまあ落ち着こうよ。別に合コンで好みを聞くのは普通なんだからさ」
「あは〜。真子何だかさっきから全てにツッコんでるね〜」
「う、まあ確かにそうだね……でもコイツ等に聞かれるのってなんか嫌じゃない?」
割と理不尽な事を言う真子。岡崎は微笑みながら、
「ふ。お前何を失礼なーー」
「うん。それは分かるよね」
「「「分かっちゃうの!?」」」
さらっと同感した美子。岡崎達は三人揃って衝撃の声を上げる。すると美子はニッコリ笑って、
「うん。もっとサラっと聞いてくれた方がいいかな。ブサイクなんだしプライドとか捨ててさ」
「くっ。なんてスマイルでなんて理不尽な事を言う美少女なんだっ」
「だがそこがいいでござる」
「ああ、素晴らしいな」
そう言い少し頬を赤らめる岡崎達。どうやら逆に嬉しかったらしい。真子は顔を引き攣らせて、
「なんか……アンタ等ってホント気持ち悪いわね」
すると岡崎は美子に対する態度から一変。少しキレ気味に、
「うるせー!! お前に嫌われたって痛くも気持ち良くもないわ!! っていうことで美子ちゃん! ズバリ好きな男性のタイプは!?」
「え? イケメンの人だね」
笑顔でそう言う美子。実に美子らしいサッパリとした答えだった。男子一同は妙に納得した顔をして、
「あ〜。つまり俺の事ね」
「なるほどなるほど。という事は俺だな」
「そうかそうか。俺の事か」
「ほう。美子って俺の事が好きだったのか」
そう言い自信満々の笑みを見せる岡崎達と実。勘違い野郎が4人誕生した瞬間だった。真子と柚菜と美子は満面の笑みで、
「うん。とりあえずアンタ等の事じゃないね」
「ええ。実死ね」
「あはは。うん。確かに全員ないね」
ズーンと落ち込む岡崎達。だが実だけははガタン! と椅子から立ち上がり、
「おい美子! この前俺の事をカッコいいって言ったじゃないかっ!」
「そんな事言いましたっけ?」
「言ったよっ! もう一度よく見てみろよ!」
実は勢いよく言って親指で自分の顔を指す。美子はジーっと実の顔を凝視する。そして眉をひそめながら、
「うーん……実さんは200万ぐらいかな?」
「何その額!? 整形に必要な費用!?」
「ううん。私への月々の献上金」
「もっと酷かった! でも了解だぜっ! 頑張ってボクは年収一千万の男になるよっ!」
そう言い笑顔でガッツボーズする実。再び真子と柚菜は満面の笑みで、
「まあ、年収一千万じゃ足りないですけどね」
「ええ。実マジ死ね」
ズーンと落ち込む実。意中の相手に二度も死ねと言われたのが相当ショックなのだろう。無言でそっと椅子に腰を下ろす。すると入れ替わりで復活した岡崎達が、
「くっ! 俺達はこの程度では諦めんぞっ!」
「ああ。俺達にはまだ希望があるっ!」
「その通りだ! 千佳子ちゃん! ズバリ好きなタイプは!?」
最後の望みを賭けて千佳子へと訪ねる岡崎達。千佳子は純粋無垢な笑顔で、
「あはー。ジャ煮ーズの男の子だよ」
ハードル高えぇえ!! そう心の中で思う三人組。だが次の瞬間には真面目な顔になり、
「来月からボイトレとダンスの稽古だな。忙しくなるぜ」
「奇遇だな。俺も山に籠りジャ煮ーズ修行に励むつもりだ」
「ふ。お前等もか。言っておくが俺は強いぜ」
そう言いニヒルに微笑んで見つめ合う岡崎達。三人の間には気のせいか火花が散って見える。真子は溜め息を吐きながら、
「いやアンタ等、学校はどうすんの?」
「ふっ。そんなのバックレるに決まってるだろ」
「そうそう。ジャ煮ーズにさえなればこっちのもんしょっ」
「これでモテモテ出世街道開拓っすわ!!」
無謀な挑戦をさも実現可能のように語る岡崎達。真子と千佳子は苦笑しながら、
「アンタ達、ジャ煮ーズをお笑い事務所と勘違いしてない?」
「あはー。確かに三人はジャ煮ーズに入れそうにないね〜」
「グッボォ! 水澄の滅多に聞けない中傷いただきましたっ!! 気持ちいー!!」
千佳子の言葉に笑顔で発狂する奈川。何も褒められていないのに実に幸せそうな顔だ。美子は真面目な顔をして、
「いや今のは中傷じゃなくてただの正論だと思うけど?」
「グッボォオ!! 美子さんのもいただきましたぁあ!! 超気持ちいいー!!」
続いて松野も笑顔で発狂する。両手を広げて今にも天に召されそうな勢いだ。そして真子も素の顔で、
「うん。普通の意見だよね」
「グッボォオ!! 真木さんのもいただきーーって気持ちよくなんて無いんだからねっ!!」
「なんでツンデレ!? より気持ち悪いよっ!」