ツッコミ癖が完全に仇となった。レミは珍しく本気で怒った様子だった。そして再びチクワというか鈴木に向けて、
「ええ、常に下界の死を探索している機械で、活動の停止した生物、場合によっては弱っているものも含めて、私達に知らせる機械ですよね。そして私達はそれを受けて回収にいく」
おおまかな構造を説明するレミ。輝希はそこで初めて仕組みを知る。
「でもさレミ、すぐ回収しにいって実は生きていたってことはないの? 心臓が一瞬止まっただけだったとか」
「ここでの活動は心臓が停止しているだけとかそういった事ではない。完全に生命の途絶えたものだけを的確に察知する。だからこの装置で検出された者は100%死亡している」
とどこか自慢げに話すレミ。と言う事は僕みたいな例は今まで一回もなかったって事か。
「その通りだな。しかしその装置のシステムも一度見直す必要があるのかもしれんな」
「といいますと?」
「確かに彼は装置の算出上では死んでいた……しかし、現に彼はこうしていきている。つまり、」
「彼は装置の計算を超える存在だったんだよ。肉体、精神力ともにね」
と鈴木は結論づけた。しかしレミはまだ腑に落ちた様子はなく、
「そんな事があるんでしょうか? だって過去にそういった例は一度もーー」
「か、あるいは……」
その小さな言葉をレミは見逃さなかった。彼女は鈴木の態度に違和感を感じ、
「長官、何かいいましたか」
「いや、なんでもない」
「そうですか……しかし私には増田がそんな特別な存在だとは思えませんね」
そう言ってここでの追求をレミは敢えてやめる事にした。レミはこの鈴木エリア長とは長い付き合いだった。だから彼が“なんでもない”とはぐらかす事がどんな意味かを知っていたからだ。レミは横で輝希の方を向き、
「この男は精神面は、好きな子にずっと想いを伝えれないような小心者だし、肉体面もガリガリの運動音痴だし、ついでにアソコはすごく小さいですし」
とさらっと爆弾発言をした。
「いや、レミこそボケてるじゃないか。あと最後のは関係ないだろ」
先程のゴリラの仕返しとばかりに指摘する輝希。てか女の子が照れもせずそんな事言うなよとも思う。しかし彼女は表情を崩さず、
「真面目な話だ。だって事実、君がそんな特別な人間には見えないだろ?」
「まあそこは自分でもそう思うけど」
そう言われて思考する輝希。確かに自分が今まで誰も超えられなかった、その死亡報告装置の予想を塗り替える程の力を持っているとは到底思えない。するとこの事件には何か別の原因があるんじゃないか、そんな風にさえ思える。すると、二人の会話を聞いていた鈴木が不意に、
「レミ君、なぜそんな事を知っているんだ?」
「そんな事とは? 増田の恋愛事情ですか?」
「いや増田君のち◯このサイズだ」
「おい、もっとオブラートに包めよ」
おっさん(おそらく)のセクハラ発言に思わず口がでた。すると、
「なんだと! 君!」
やばい。また条件反射でツッコんでしまった。怒らせたか?
「普段、君のそれは包まれていないのか!? そうなんだろ!? そういうことだろ!?」
「何言ってんだよこのおっさん」
「気にするな。いつもの事だから」
と何故かヒートアップする鈴木に比べて、また始まったな、といった感じで冷静なレミ。鈴木は今度は通話越しになんだかハアハア言い始めて、
「そ、その包まれていない何で、ナニでい、一体毎日毎晩レミ君に、レミ君になにをし〜……ハッ!!」
そこで鈴木は我に帰った。彼はオホンとわざとらしい咳を一つ。今度は冷静な様子で、
「で、レミ君。君は何故増田君の普段なら絶対知り得ない、そんな個人情報を知っているのかね?」
「それはですね」
「つまりやったんだなあれを」
「私の話を聞いて下さい。長官」
「じゃあ私の話も聞いてくれ。レミ君、いますぐその男を殺しなさい」
「なんでせっかく助かった命をそんな事で無くさなければいけないんだよ」
もう駄目だこのおっさん。もはや天使なのか悪魔なのか分からない事を言い出す鈴木にうんざりな輝希。それはレミも同じな様で彼女は気だるそうに、
「全く長官は……ええとそれはですね。増田が時々ワザとのように私の入浴中に風呂場に入ってくるので不本意ながら拝見してーー」
「違うよ、君だよ。君が僕が入っていてもおかまいなしに侵入してくるんだろ」
「すまんそうだった……といえば今日は許してくれますよね?」
「やめてよ、人を変なキャラにするの」