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無料オリジナル小説 ボラ魂 1ー3

「うん……お前、すごいよ」

 真子は若干怯えながら、

「……今度はなんですか?」

「いやだって、いないぜ!? 一人であんなに騒げる奴! 俺いるのかと思ったもん! 見えない友達とかが! それか何か取り憑いてるのかとか!? いや、ホントそう錯覚するぐらい、スゴいすごい凄いスゴイすげぇよ!!」

「なんかスゴい笑顔で、すごい褒めてきた!」

 そしてその全てが、真子の心に突き刺さる。軽いイジメだ。しかも極めつけは、

「いや、ホントすごい同情してるんだよ。まさかこんな奇麗に、こんな残念な写真が撮れるとは……」

 実の右手には、ズボンから出したデジカメ。画面にはマイク片手の真子。

「なにこれ!? 私すごい笑ってる! 気持ち悪っ!!」

 身を乗り上げ、デジカメを凝視する。それは、まぎれもなく真子だった。そして屈託のない、笑顔だった。

「いや〜〜ホント同情するよ?? ボランティア部に入らないと、これをバラまかれる定めなんて」

「いや、そう言うのいいですから、早く消して下さいよ」真子ムカつきゲージ(1)

「消すよ?? 入ってくれたら」

「じゃあ、カメラ貸して下さい」ゲージ(2)

「じゃあ、入ってよ(ニッコリ)」

「ほ・ん・と・コイツはぁあぁ〜〜」

 

 ゲージ。ブチギレた。

「いいかげんして下さい!! 私帰ります!」

 真子はチラリ壁掛け時計を見る。時刻は七時。今から帰れば、見たいTVに間に合う。余裕だ。

 無駄な時間を過ごした。入る気なんてないのに。これっぽちも。

「ごめんごめんっ。ふざけすぎたっ。まってくれよ」

 がしっ。腕を掴まれる。

「いやもういいですからっ」

 強引に振り払う。だが解けない。相変わらずスゴい力だ。ちっさいのに。

「ってか大体なんで私にこだわるんですかっ!!」

 まあ、誰でもいいから、部員が欲しいだけだろう。真子はそう思っていたが、

「頼む!! 中学でボランティア部だった、お前が必要なんだよ!!」

 

 返って来たのは意外な言葉。動揺する。真子は思わず腕の力を落とす。するっ、と握られた腕が解ける。実と向き合い真子は、

「なんで、それを……」

「知り合いに聞いたんだよ。元部長の一年生がいるって」

 動揺する真子とは対照的。笑いながら実は答える。

「な? お前なら経験者でしょ? だからお願い!!」

 両手を合わせ頼み込む実。でも彼女は答えられない。

「……失礼します」

 頭を下げ教室を出ようとする真子。元部長。それはいい。だが他には触れられたくなかった。もう思い出したくないのだ。

「まってくれよ!!」

 再びせまる実の手。でも今度は躱した。掴まれる事なく、鞄を持ちそのままドアの方へ。

早く家に帰ろう。

「急にどうしたんだよっ!!」

 珍しい実の焦り声。だが真子は止まらない。仕方なく再び腕を掴もうとする。その時ーー

「もういいよ。そんなムキにならなくても」

 突然の声。声は教室の隅、窓際から。実、真子は視線を声の方へ。

 そこには少女がいた。鋭い目。細い眼鏡。長い黒髪。スカーフからして二年。ひっそりと椅子に腰掛け、手には本。題名は“猫の生態”。

 初めからか、それとも途中からか。よくわからない。だが、そこには“美咲高校ボランティア部(仮)部長”の姿があった。

「別にその子じゃなくても……そもそも部員自体、特にいらないし」

 “柏木柚菜かしわぎゆずな”は言葉を続ける。ボソッ、と独り言みたく呟く。視線は本に向けたまま。冷たい口調。柚菜の容姿のように。横目で真子をチラリ。そしてまた本へ。

「でも、柚菜〜〜 このままじゃ廃部だぜ〜〜 部長だろ〜〜」

 まるで正反対な実の口調。でも柚菜は変わらす冷淡に、

「まあ、それならそれでも……。ていうかまず創部すらしてないし」

 真子は呆れ気味に、ボソッと、

「……どっちが部長だか解らない台詞ですね……」

「関係ないでしょ、あなたには」

 柚菜は言い放つ。まだいたの? そんな感情入りの視線で。突き刺すように。

「っ!!」

 真子は思う。なんかこの人は好きになれない。帰ろう。でも、ここで帰るのはなんか負けた気がする、とも考える。

「そうですね、どうでもいいですよっ。もう帰りますよっ!! ってか、そっちが無理矢理連れて来たんでしょ!!」

 教室中に響く真子の怒声。でも柚菜は眉ひとつ動かさず。冷たく鋭い柚菜の視線、怒りに震える真子の視線。互いににらみ合い。

「ちょっ、な? 落ち着こうぜ二人とも」

 止めに入ったのは実。二人の視線を受ける。苦笑い。

「「そもそも先輩あなたが……」」

 そんな言葉と、鋭い怒りの視線×2。

「だって柚菜〜〜 元ボランティア部・部長だぜ? ぜひ入部を!! ってなるだろ?」

「はあ……」

 柚菜は大きく溜め息。

「実、知らないの?」

 柚菜は感情を、怒りから呆れへ。そして、決定的な事実を告げる。

『あそこの中学のは、活動なんかしてなかったわよ』

「っ!!」

 ビクッ。真子は大きく身体を震わせる。

 でも構わずに、柚菜は言葉を続ける。

「聞いた話によると、他の部からはみ出た人ばかりで、みんな内定目当てだったらしいし。だから、そんな子を入れたってーー」

 真子は駆け出した。

 最後まで聞きたくない。鞄を手に全速力。遠ざかる第四準備室。小さくなる、実の呼び止める声。全てに背を向ける。そのまま階段、下駄箱、校外へ。真子は嫌だったのだ。

 

 “あの頃を思いだすのは。”

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マーティー木下@web漫画家
web漫画家です。 両親が詐欺被害に遭い、全てのお金と職を失いました。 3億円分程の資産を失いました。 借金は800万円程あります。 漫画が好きです。コンビニも好きです。
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