オリジナル小説

オリジナル小説 ボラ魂3ー3

「え〜と、じゃあ、ゴホン」

 黒板前の教壇へと立った実。わざとらしく咳払いを一回。ちなみに柚菜はその隣の椅子にちょこん、と座っている。真子は黒板正面の席に着き待機。すると実が教卓に手を置きながら大声で、

「三人になって公式にボランティア同好会になったよミーティング!! イエェーイ!! ヒューッ!! ヒューッ!!」

「……」

「……」

 パフッ。パフッ。と、柚菜が手に持つパフパフラッパをやる気なく鳴らす。そしてポケットへと静かにしまった。

「……え?」

「ん? どうしたんだ真子? きょとんとして。もう部活は始まってるんだぞ」

「いや、え〜と、なんかノリがよくわからなくて」

「ノリがわからない〜? じゃあ、お前の中学ではどう言う風に始めてたんだよ?」

「え、私の中学ですか? ……私のトコはもう一人が来たら適当に始める感じでしたね」

「ヒュ〜、聞きましたかぁ〜柚菜ぁさん。なぁんすかぁね〜、あのやる気のない姿勢はぁ〜〜?」

「いや、そんなムカつく気持ち悪い顔されても困りますから」

「ええ、ホント気持ち悪いわよ実」

「あれ、なんだろ。急に涙が……まあ、とにかくこれがウチ流ってことだよ。早く慣れるんだな」

「はあ、わかりましたよ……」

「よし。じゃあ気を取り直して始めるぞ!」

「はいっ」

「今日はまず初めに報告からだ。真子聞いてくれ!」

「はいっ」

「本日付けで新入部員の真木真子が入る事になった!」

「はいっ。それ私の事ですねっ」

「そうだっ! 以上!」

「……」

「……」

「……え? 終わりですか?」

「ん? 真子以外に新入部員って入ったけ。柚菜?」

「いいえ。もちろん。入ってないわよ」

「だよな。じゃあ、やっぱり報告終わりだ」

「いやいや。だったら私の紹介とかを入れて下さいよ。やりますから」

「え〜。だってお前のことなんて知れても嬉しくないからな〜」

「ええ。自分から晒しにくるなんて恥女なのかしら?」

 前言撤回。やっぱり仲良く出来ないかも知れない。真子は頭を抱えながら、

「ホントこの人達は〜〜……もういいです。勝手にやりますから」

 そう言い真子は椅子から立ち上がる。少し恥ずかしそうに頬を赤らめながら、

「今日からボランティア同好会に入った1年2組の真木真子です。元テニス部で趣味は音楽鑑賞。好きな物はカワイイ小物とかぬいぐるみです。よろしくお願いしますっ」

「……うん。そうだね」

「……はい。そうですか」

「いや、だから質問とかして下さいよ」

「え〜。じゃあ、今朝は何を食べましたか?」

「え? オムレツと食パンとミルクです」

「最近急に体調を崩す事とかはありますか?」

「いや、特にはないです……ってかそう言う検診みたいのじゃなくて、普通のをしてくださいよ」

「え〜〜、あっ。はい。質問です」

「はい。何ですか先輩?」

「さっきから僕たち先輩への文句が多くないですかっ!?」

「知りませんっ! ちゃんとやって下さい!」

「あ。えっと質問です」

「何ですか、柚菜先輩?」

「小腹が空いたんですけど、ドーナツとか持ってないですか?」

「ありませんっ! 怒りますよっ!」

「はいっ! 正直もう怒っていませんかっ!?」

「怒ってません! ってかそんなどーでもいい事でイチイチ挙手しないで下さい!」

「ぶ〜。柚菜〜。あいつさっきから文句が多くね? めんどくさいよ〜」

「まあ、もう十分楽しんだからそろそろ真面目にやりましょう。面倒くさいけど」

「あの、小声で面倒くさいとか言うのやめてくれませんか? 傷付きますから」

「はいはい。えっと、じゃあ質問な」

「はい。何ですか?」

「真子は何でボランティア同好会に入ってくれたんだ?」

「え。え〜と、それは、」

「それは?」

「え〜と、」

 うまく言葉が出てこない。それは今でも気持ちの整理がついていないからなのだろうか。真子は頬をポリポリと掻き、必死に頭を回転させる。そして手探りで言葉を選びながら、

「なんていうか、その、自分なりのケジメなんです……」

「ケジメ?」

「ええ……実は、ずっと逃げて先延ばしにしている事があって、それをどうにかしたいんです。でも、まだ勇気が足りなくて、だから……」

「ふ〜ん……そう言えば、あの時もそんな事言ってたな」

「はい……」

「そっか……まあ、よく解らなかったけど、何か目標があるのはいいことだぜ。頑張れよっ!」

 屈託のない笑顔を浮かべる実。見ていると勇気をもらえるような笑みだった。少し悔しいな。なんて思いながら真子は微笑んで、

「ありがとうございます……あ。あともう一つ理由がありました」

「ん? 何だ?」

「実先輩があまりにもしつこかったからです」

「結局俺のせいかよ!?」

「いや、別にせいってわけじゃないですけど、しつこかったのは事実ですからねっ」

「ぶ〜。はいはい。わかったよー。俺が無理矢理に真子を入れましたよ〜。どうせ俺が悪いですよ〜」

「だからそこまでは言ってませんよっ。えっと、なんか変な空気になっちゃいましたね。ここでやめさせてもらいますっ」

「いいえ。一つ、いいかしら?」

「柚菜先輩?」

 今まで黙っていた柚菜が不意に声を上げた。真子は少し動揺。なんとなく身構えてしまう。柚菜は鋭い眼差しで真子を見つめて、

「私、あなたに質問したい事があるの」

ABOUT ME
マーティー木下@web漫画家
web漫画家です。 両親が詐欺被害に遭い、全てのお金と職を失いました。 3億円分程の資産を失いました。 借金は800万円程あります。 漫画が好きです。コンビニも好きです。
こちらもよろしくお願いします
no image 伝説の詩人・雪平重然の自由詩集

歴史の闇 平安詩人バトルロワイヤルで命を落とした伝説の詩人・雪平重然の自由詩集4

2024年4月8日
3億円詐欺られたweb漫画家・マーティー木下の部屋
※この記事はフィクションです。 平安詩人バトルロワイヤルとは 平安詩人バトルロワイヤルとは 和歌全盛期に行われた最強の …
オリジナル小説

無料オリジナル小説 ボラ魂2ー16

2023年6月4日
3億円詐欺られたweb漫画家・マーティー木下の部屋
 ピィイィイ!! 「プレイ!」  実のサービスからスタートされる第六ゲーム。最後に成りかねないこの一戦。より気合いを入れ試合へと挑む。 「よしっ!」  球 …
オリジナル小説

無料小説 ボラ魂2ー19

2023年6月18日
3億円詐欺られたweb漫画家・マーティー木下の部屋
「いや〜、参った〜」  ゲーム終了後。すぐさま審判台下へと集まった三人。実は晴れ晴れした笑顔で、真子へと賞賛を送る。 「完敗だぜ真子。俺の負けだよ」 「あ……は …
エンジェルゲートサムネ オリジナル小説

オリジナル小説 エンジェルゲート第4章ー20

2023年3月31日
3億円詐欺られたweb漫画家・マーティー木下の部屋
 通常、悪魔となった者には最低でも5〜6人の小部隊編成で始末に向かう。それに元がイワンの様に優れた者ならばその人数はさらに必要となるだろう。それほどまでに悪魔となった者の力は脅威 …
エンジェルゲートサムネ オリジナル小説

オリジナル小説 エンジェルゲート第2章ー16

2023年2月1日
3億円詐欺られたweb漫画家・マーティー木下の部屋
「輝希が生まれて口にした言葉がね、ぷっ、これが可笑しくて、なぜか“ちくわ〜”って急に喋りだしたらしいよ」 「むう……やはり増田は練り物と何かしら関係が」  と、お前が …
エンジェルゲートサムネ オリジナル小説

オリジナル小説 エンジェルゲート第4章ー3

2023年2月11日
3億円詐欺られたweb漫画家・マーティー木下の部屋
「ミカっ、二人はどこに行くと言っていた!?」 「ええ!? そこまでは聞いてませんよ!」  いまだにたっぷりマーガリンを塗りたくっているミカ。レミはそんな彼女に、  …

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です