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無料オリジナル小説 ボラ魂2ー14

「まっ、まあ、はい。そのつもりですよ」

「そっか。ならわざわざ言う必要も無かったな」

「まあ、そうですね……ってか、なんか先輩ってつかみ所が無いですよね」

「ん? どういう意味だ?」

「なんでもないですよ。バーカ」

「バカはいらなくね!?」

「ふん」

 真子はツッコミをシカト。実に心を見透かされたのが不満だったのだろう。不機嫌に鼻を鳴らし、顔を赤くして自コートへと去って行った。

「おーい! ちょっと待てって! どういう意味だよ!?」

 再び問い掛けるが、真子は応えない。聞こえていないのか。それとも意図的な無視か。どちらかはわからない。実は苦笑しながら、

「……ったく。まあいいか。少しは元気になったみたいだし」

 そう呟いて、ベースラインの方へと戻って行った。

「ふぅ。あの先輩はなんだかなぁ……」

 ラケットをくるくる回しながら呟く真子。今さっきのあの瞳。なんだか頭を覗き見られたよう。そわそわして落ち着かない。だめだ。あの先輩と話すと、やはりどうにも調子が狂う。

「まあ、今考えても仕方ないか……」

 真子は深く深呼吸。素早く思考切り替え。体勢を整え試合開始を待つ。そして、実がおもむろに左手を挙げた。準備完了のサイン。それに応え真子も左手を挙げる。審判台の美子がこちらを向く。目が合う。真子は静かに頷く。そして再び実を見据えて、落ち着いた声で小さく、

「ふう……負けませんよ。先輩」

 ピィイィイ!!

「プレイ!」

 甲高い笛の音。美子の澄んだはっきりとした声。試合開始の合図。コートに緊迫した空気が漂う。

 短い掛け声。高い跳躍。そして放たれた実のサーブ。やはり少しフォームが粗い。だが、球速が格段に上がっている。ラリーの時とは比べ物にならない。自身の低い身長を、強靭な跳躍力で上手くカバーしている。並のテニス部よりも遥かに速いだろう。しかし、

「ふっ!」

 速くても軌道自体は単純。予測は出来る。返す事は難しくない。真子は右サイドへと打球を放つ。そして、さらに返って来た球を逆サイドへスマッシュ。実はそれに俊敏に反応。だが球には数センチ届かない。失点を許してしまう。

「ラヴ・15!」

「よしっ!」

 真子の先取点を告げる美子の声。真子は笑顔でガッツポーズ。幸先良いスタートだ。実は苦笑いで頭を掻きながら、

「う〜ん、やっぱコースがうまいなあ……よし」

 気合いを入れ直して、サーブのスタンバイ。真子も構え直す。1ポイント程度で浮かれている場合ではない。

 再び実のサーブ。だが少しフォームが違う。球威もあまりない。

「へえ」

 美子が感嘆するように呟く。実の放ったのはおそらくトップスライス。スピンより容易とは言え、高い技術が要されるサーブだ。それを実が放った。その事実に真子は動揺する。だが、それぐらいはさして問題にはならない。

「ふっ!」

 実のサーブは未完成だ。スピンが甘い。これなら初見でも見破れる。スピン方向に回り込む真子。そしてスイング。インパクト時に横回転を加えて球を放つ。実の方へ跳んでいく打球。バウンド時に大きく跳ねる。すかさず対応する実。左へと跳ねた球に、回転を加えて放つ。だが、回転の量が甘かった。真子のかけたスピンを消しきれない。予測よりも低い軌道を描く球。ネットに防がれ、球は真子まで届かない。

「ちぇっ」

「ラヴ・30!」

 再び真子の得点。順調にポイントを得ていく。実は歯がゆそうに舌打ち。再び気合いを入れる。先の失敗を踏まえながら試合へと望む。

 どうやら実にはまだ策があるようだ。油断は出来ない。だが、

「ラヴ・40!」

 その程度で真子は崩れたりしない。

「ゲーム真子 ワンゲームtラブ!」

「くっそー負けたぁ〜。やっぱうまいなあ……」

 真子のゲーム先取を告げる声。ラヴゲーム。真子のストレート勝ちだ。実は悔しそうに唸る。しかし顔には笑顔。とことんこの試合を楽しんでいるようだ。

「ふう」

 真子は解放感から思わず大きく溜め息。でもまだ1ポイント取っただけ。先は長い。緩んだ気を締め直す。そしてコートチェンジ。実コートへと歩き出す。その途中、実とすれ違う。実はラケットを真子の眼前に突き出しながら、笑顔で、

「真子、こっからガンガン巻き返してくからな!」

「ええ、望むとこですよ」

 真子も笑顔で応える。互いにやる気は十分だ。

 

 ピィイィイ!!

「プレイ!」

 試合開始の合図。コート上の二人に緊張が走る。第二ゲームは真子のサービスだ。

「ふう」

 テニスはサーブ側の方が基本的に有利だ。だが今、真子は不安を感じていた。心配なのだ。上手く放てるのかが。一応、先程のラリーでもサーブはした。だがあれは所詮練習。実践向けのサーブとは別。だから躊躇いが生じてしまう。

 でもやらなきゃ。

「ふっ!」

 気合いを入れサーブを放つ。ボールの上側を叩き、球に横回転を加える。いわゆるキックサーブ。真子が得意としていたサーブだ。球はネットの上を高く超え、やや左気味に実コートへと向かって行く。実はそれに対し俊敏に反応。球に大したスピードはない。実の反射神経ならば容易に返せる。だがバウンド直後、球は大きく軌道を変える。

「ちぇっ!」

「15・ラヴ!」

 実から見て左へと跳ねた球。突然の変化。実はすかさずラケットを振りかざす。だが届かない。結果空振り。真子のサービスエース。二ゲーム目も順調な出だしだ。

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マーティー木下@web漫画家
web漫画家です。 両親が詐欺被害に遭い、全てのお金と職を失いました。 3億円分程の資産を失いました。 借金は800万円程あります。 漫画が好きです。コンビニも好きです。
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